2021年09月15日号
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artscapeレビュー

大橋可也&ダンサーズ「高橋恭司展『走幻』パフォーマンス」

2012年11月01日号

会期:2012/10/07~2012/10/28(毎週曜)

NADiff Gallery[東京都]

写真家・高橋恭司の展示に関連して行なわれたパフォーマンスは、4週連続毎回4時間(最後の30分がコアタイム)という異例の形態をとった。しかも会場は、ギャラリースペースと繋がる美術系書店の店内。事情を知らないでやって来た本が目当ての客のなか、6人のダンサーたちは幽霊のように徘徊し、ときに床や壁に体を叩きつける烈しい動きもすれば、ときに客と並んで本を開いたりもする。劇場とは違って至近距離で踊るダンサーたち。女性たちの露出した肌や男性たちの汗など、近すぎてどう見たらいいかとまごつき、迫ってくると目を逸らしたりしてしまう。なにやってんだ、俺。いや、こんな戸惑いこそこうした企画の醍醐味であって、劇場空間ではえられない感覚が痛気持ちよかったりするのだが。そういえばNADiffが原宿にあった10年前、KATHYも同じように店内を徘徊するパフォーマンスを行なった。ただKATHYが頭に黒ストッキングを被っていたのと違って、大橋可也のダンサーたちは目がむき出しだ。迫ってくると目を逸らしてしまうのは、なによりもダンサーと目が合ったとき気まずいから。ダンサーは踊りに没頭する「憑依した目」のみならず、冷静に空間を感じ客に衝突したり本を散らかしたりしないようにする「働く目」も携えている。「働く目」を観客が見ないことにする(観客に見せないことにする)ことで、ダンサーは「働く目」を隠し「憑依した目」をしたダンサーになる。やっぱりそういう意味では、ダンサーは人形だ。いや人間が踊ったっていいはず、でも大橋は人形をダンサーに求めたんだ。4時間の上演の真ん中1時間半ほど見て、帰りの電車のなか、コアタイムをUstream中継で見た。カメラ越しの彼らを見ることに気まずさはない。ネットコミュニケーションがぼくたちに与えたものと奪ったものを確認した。

高橋恭司「走幻」大橋可也&ダンサーズパフォーマンス20121014(抜粋)

2012/10/28(日)(木村覚)

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