2021年12月01日号
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artscapeレビュー

re-pair展

2012年11月01日号

会期:2012/10/06~2012/12/02

旧元町公民館[大分県]

別府市内は、「混浴温泉世界」の開催にあわせて「ベップ・アート・マンス2012」という名の市民によるさまざまな文化的なイベントが催されている。本展もそのフレームを活用して開催された美術展。ランドスケープデザインスタジオのEARTHSCAPEとアーティストの竹下洋子が、商店街の一角に立つ古い雑居ビルの屋上に設えられた公民館に手を加えた作品を発表した。
狭い階段を登っていくと、壁のいたるところにカラフルな線が走っていることに気づく。よく見ると、それらは壁のヒビに糸を押し込んだ作品だった。公民館の内部は、縦に置き直された日の丸を中心に帳簿や時計、魔法瓶、湯呑み、小皿などが陳列され、それらが往時の活動を偲ばせていた。
公民館の内外で繰り広げられていたアート作品に通底していたのは、古びたモノを美しさに反転させる発想。そのことによって建物や共同体の「再生」を謳うアートプロジェクトは数多いが、この作品がすばらしいのは、そのような美辞麗句を軽々しく喧伝することなく、むしろ歴史を「想像」するように仕向けるひそやかな品性が一貫しているからだ。
アートにできることは限られている。だが、それは無力であることを意味するわけではない。私たちの想像力に大いに働きかけることができる、その意味はとてつもなく大きい。

2012/10/07(日)(福住廉)

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