2022年01月15日号
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artscapeレビュー

プレビュー:駄作の中にだけ俺がいる

2012年11月01日号

会期:2012/11/10

ユーロスペース[東京都]

いつの頃だったか、小説家の遠藤周作が自宅の食卓を紹介する雑誌記事で、夫人とともに白米と味噌汁とめざしという絵に描いたような清貧の食卓を撮影させていたことがあった。あれは、どう考えても雑誌のための意図的な演出だったのではないかといまでも訝っているが、この話を思い出したのは、会田誠のドキュメンタリー映画があまりにも中庸な家族を映し出していたからだ。
アーティストという職業が特殊であることは疑いないとはいえ、子どもの教育問題に思い悩む妻や、それを横目に仕事に打ち込む夫という家族風景は、凡庸といえば凡庸である。映画では息子の問題児ぶりが強調されていたが、問題の程度で言えば、まだまだ生易しいし、もっと激烈で非道な幼少期を過ごした大人はいくらでもいる。
そうすると、もしかしたらこの映画のなかの会田家は、かつての遠藤周作のように作為をもってつくられた家族像なのではないかと裏を読みたくもなる。つまり会田誠は平凡な家族像ですら身を持って絵に描くことで、とんでもなく恐ろしく、恥ずかしい、身も蓋もない裏側の世界を隠しているのではないか。
だが、よくよく考えてみたら、そのようにして意味を過剰に読み取らせることをもっとも得意としてきたのが、会田誠その人だった。バカなふりして油断させて批評的な一撃を加えたり、そうかと思って警戒すると、ほんとうにバカなだけだったり。このような両面性が会田誠の魅力だとすれば、このドキュメンタリー映画は、良くも悪くも、会田誠の一面を見せることには成功していると言えるだろう。

2012/10/10(水)(福住廉)

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