2021年09月15日号
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artscapeレビュー

山下残『ヘッドホンと耳の間の距離』

2012年11月01日号

会期:2012/10/10~2012/10/14

STスポット[神奈川県]

『北斗の拳』や『ジョジョの奇妙な冒険』を彷彿とさせるおかしな表情やポーズを取りながら、若い男二人が声を漏らしたり床を踏みしめて音を立てたりするのを、マイクロフォンが拾って、アンプから増幅した音を出す。50分の舞台で起きるのは基本的にこれで、仕組みとしてはさほど目新しくないとも言えるのだが、視覚も聴覚も刺激するしっかり充実した上演であった。どんな動きでも体は勝手に音を出しているもの。ダンスだからと言って視覚的な動きにだけ注目するのではなく動く際の勝手に出た音にも注目し、それを採集して、アクションペインティングならぬアクションプレイング(演奏)にしたのが面白い。それは確かにそう、しかし、ただ採集したのではなく、大事なのは、瞬時にディレイやリバーブで加工することで、音は動作から離れ一人歩きを始め、そのうえでなおも音の源である体の近くに居座っていることで、その効果が面白さを倍加させていた。四つん這いになって倒れ込むと両膝と両腕で床を叩くことになるが、その音が過剰にヴォリュームを上げられ、リバーブもかけられなどされると、まるで漫画の効果線みたいな効果を与える。四つん這いの姿を置いていけぼりにして、音が勝手に過激化する。視覚像と音像のギャップがおかしくて、身体の見え方が変わってしまう。そんな仕掛けがじつに巧みだ。それよりなにより、このポーズ(動き)を取らせるか!と山下残のセンスがずるい。それは山下が既存のダンスにとらわれずにダンスをつくっているからこそのものだろう。そう、ダンス作品を面白くするのもつまらなくするのも、作り手が「ダンス」なるものにどう囚われているのかを自覚し、その囚われからどう自分を解放しようとするのかにかかっている。

2012/10/14(日)(木村覚)

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