2021年12月01日号
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artscapeレビュー

動く絵、描かれる時間:ファンタゴマスリア

2012年11月01日号

会期:2012/09/28~2012/10/17

横浜市民ギャラリー[神奈川県]

横浜市民ギャラリーの恒例企画展「ニューアート展NEXT」。今回は、映像表現をテーマに、金澤麻由子とSHIMURA brosがそれぞれ映像インスタレーションを展示した。とりわけ印象深かったのが、後者。いくつかのシリーズを発表したが、なかでも映像を物質化した作品が秀逸だった。
ブラックキューブに入ると壁面に一点の光が映っているが、それが何の図像なのかまったくわからない。プロジェクターから投射されていることはわかるが、音もないから映像作品なのかどうかすらおぼつかない。すると、突然機械音とともに会場の一角から煙が吹き出しはじめた。それとともに目の前の光点がしだいに縦に広がってゆき、やがて細い線となってはじめて気がついた。煙はプロジェクターから投射される光を物質として際立たせるための仕掛けであることを。
会場内に充満した煙は、暗闇では視認することができないが、光線の周囲を激しく揺れ動いているのがはっきりと見える。まるで一枚の帯のようだ。
しばらくして光線が左右にゆっくり動き出すと、その先にはいくつもの鏡面が設置されていたため、光線は会場内を乱反射し始め、光の帯は幾重にも重層化した。光に包まれる経験はとくに珍しくもないが、何本もの光の帯に身体を貫かれる経験はそうそうない。
光と闇で構成されている映像。映画では自明視されている大前提を、映画とは異なるかたちで浮き彫りにした、アートならではの作品である。しかも、それをこれほどシンプルに表現した作品はほかに知らない。「混浴温泉世界2012」でアン・ヴェロニカ・ヤンセンズが似たような作品を発表していたが、SHIMURA brosのほうが視覚的にもコンセプトの面でもすぐれていたように思う。

2012/10/03(水)(福住廉)

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