2021年12月01日号
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artscapeレビュー

稲垣元則 展「phase」

2010年04月15日号

会期:2010/02/13~2010/03/13

ギャラリーノマル[大阪府]

稲垣元則の新作展。まさに静謐という緊張感に満ちた印象のインスタレーション空間だった。2枚から6枚で1組のモノクロ写真の作品が壁面に整然と配置されていた。一見展示がランダムにも見えるのは作品のサイズが数種類あるせいだったが、よく見るとそれらのサイズも限られたもので揃っている。作品ごとの間隔や展示の幅も細かく計算しての構成なのだという。黒いフレームに収められた、山、湖、空、などの風景写真は、少しだけ撮影角度が異なっていたり、微妙な雲の動きや風の様子が確認できたりと、1組のまとまりごとに時間の経過と光景の微妙な変化が示されていた。写真の色合いからも一枚ごとの表情や有様を比較できるが、一組ずつでも成立し、空間全体としてもひとつの世界としてなっているインスタレーションをぐるりと見ているとまるでオーケストラの鑑賞でもしている気分になってくる。2階の空間では過去のドローイング作品の数々を見せてもらった。稲垣はいまもほとんど日課のようにドローイングも描き続けているというが、写真の現像作業もまたドローイングを描いているときとほとんど同じ感覚なのだそう。そういえば、以前映像作品を発表していたときも、同じような意味合いの言葉を聞いた記憶がある。冷静なまなざしと安定した穏やかなリズムのなかにうかがえるはかない時間のうつろいがとても美しい。最終日になってしまったが見れて嬉しかった。

2010/03/13(土)(酒井千穂)

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