2021年10月15日号
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artscapeレビュー

通学路 Vol.1

2010年04月15日号

会期:2010/03/12~2010/03/27

HAPPA[東京都]

デザイン事務所のPLANCTONが刊行しはじめた「通学路」シリーズは、「全4回にわたり日本全国、47都道府県を網羅する」という意欲的な写真集の企画である。その「Vol.1」として第一線の写真家、13人が自分の出身県を担当した作品集ができ上がり、お披露目の展覧会が中目黒のギャラリー・スペースHAPPAで開催された。参加作家は浅田政志(三重県)、熊谷隆志(岩手県)、佐々木知子(愛媛県)、笹口悦民(北海道)、鈴木理策(和歌山県)、田尾沙織(東京都)、竹内裕二(広島県)、中川正子(千葉県)、中野敬久(埼玉県)、松尾修(長崎県)、松岡一哲(岐阜県)、横浪修(京都府)、渡辺慎一(栃木県)である。
たしかに、誰でも子どもの頃の通学路を想い起こすと、甘酸っぱい記憶がよみがえってくるだろう。日本の「いま」を体感し、子どもたちがおかれている状況を浮かび上がらせるという意味でも、なかなかいい切り口だと思う。だが実際に展示を見て、写真集を手に取ると、残念ながら企画がうまく成立しているとは思えなかった。展示は写真家の数が多過ぎて一人当たりのスペースが狭く、それぞれの写真家たちの世界があまりうまく伝わってこない。写真集の方は、16ページ(写真点数は10点)で1,500円という値段なので、2~3冊ならともかく13人全部を揃えるとなると2万円近い値段になってしまう。かといって、2~3冊ではそれぞれの写真家たちの視点を比較する楽しみがなくなる。しかも、通学路の小学生たちにストレートにカメラを向けた浅田政志や松岡一哲を除いて、ほとんどの写真がやや距離を置いて淡々と「風景」として撮影したものなので、何冊か見ると違いがわからなくなってしまう。やはり、一冊の写真集にまとめる形の方が、価格は多少高くなってもよかったのではないだろうか。志が高く、なかなかいい企画なので、何とか最後まで「日本全国、47都道府県」の写真集を完成させてほしいのだが。

2010/03/12(金)(飯沢耕太郎)

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