artscapeレビュー

「デザイナーズ集合住宅の過去・現在・未来」展

2010年04月15日号

会期:2010/03/10~2010/03/20

新宿NSビル16階 インテリアホール[東京都]

ミサワホームAプロジェクトの大島滋と、社会学者の南後由和が企画監修にあたり、集合住宅のあり方を、さまざまな観点から取りあげた展覧会。「デザイナーズ」と付いているが、実際には「デザナーズ集合住宅」という枠組み(なんてそもそもつけられないであろうが)を揺らすような、構成であったともいえよう。会場は5つのパートに分かれ、それぞれ、集合住宅に関する統計データの可視化、集合住宅的要素についてのアンケートからの展示、企画仲介業者によるパネル説明、10の系に分けた世界の集合住宅の紹介、Aプロジェクトによる建築家のプロジェクトの展示である。集合住宅をめぐって、大きく三つの視点が絡み合いながら展開していたのではないか。つまり、社会学者の視点、不動産会社の視点、建築家の視点である。それらを統合する答えを出そうとしているわけではない。むしろ、並列して視点を提示しているところが、複雑にさまざまな立場の人たちが絡んで成立している集合住宅の現実を示しているように思われた。大島氏の成果のひとつは、その複雑な現実の立場のひとつとして、建築家を提示したところにあるだろう。南後氏を起用したことからも分かるように、建築家を社会とつなごうとする、真摯な意図を持つ企画であったといえる。

URL=http://www.a-proj.jp/event.html

2010/03/19(金)(松田達)

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