2021年10月15日号
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artscapeレビュー

『建築雑誌3月号』

2010年04月15日号

発行所:日本建築学会

発行日:2010年3月

特集の「ナイーブアーキテクチャー」が目を引く。現在、もっとも注目されている現象、すなわち繊細な空間のデザインにスポットを当てているからだ。本来、こうした企画は『10+1』や『建築文化』など、民間の雑誌が組んでいたが、いまや両者ともに存在せず、一方で老舗の『新建築』は特集主義をとらないので、結果的に『建築雑誌』がその役割を引き受けているのも興味深い。「ナイーブアーキテクチャー」は、真壁智治が提唱し、議論を巻き起こした「カワイイ」のコンセプトを発展させたかたちになっている。使い手の共感を得るためのナイーブさも、カワイイのときに提出されていた考え方だ。また、これをはっきりと日本発と打ち出しているのも、この企画の特徴だろう。日本の現代建築の動向は、ある種のマニエリスム、あるいはガラパゴス島化ともとられかねない側面をもつのだが、それを新しい建築のパラダイムとして肯定的にとらえようとしている。また私性、女性性、身体性といったキーワードも散見され、SANAA、青木淳、アトリエ・ワン、石上純也、中山英之らの(すでに)人気建築家をバックアップする特集だ。個人的に気になっているのは、カワイイの議論のとき、真壁は良い「カワイイ」(SANAA的なもの)と悪い「カワイイ」(キッチュなもの)を峻別し、前者のみを擁護していたが、こちらの方を今回、ナイーブアーキテクチャーとしてラベルを貼りかえたものと理解すれば、よいのか、ということである。

2010/03/31(水)(五十嵐太郎)

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