artscapeレビュー
関口正夫「光/影」
2010年04月15日号
会期:2010/03/08~2010/03/21
ギャラリー蒼穹舎[東京都]
関口正夫は牛腸茂雄と桑沢デザイン研究所で同級だった。1968年に同校研究科写真専攻を卒業後、さまざまな職業を転々としながら路上のスナップ撮影を続け、2008年に62歳でやはり桑沢の同級生の三浦和人との2人展「スナップショットの時間」(三鷹市美術ギャラリー)を開催した。今回の個展の作品は、1980年代から約30年間の写真から選んでいるという。
関口は学生時代からスナップショットに天賦の才能を発揮してきた。目の前にあらわれた光景を、何気なくつかみ取っているだけに見えて、フレーミングは的確であり、魅力的な光と影のパターンをきちんと画面におさめている。スナップの技術は、狙うのではなく呼び込む能力を磨くことにあると思うが、その構えが最初からしっかりできあがっているのだ。ことスナップということだけで見れば、牛腸茂雄よりも才能は上、日本の写真家でいえば木村伊兵衛並みではないだろうか。ところが近作になるにつれて、その画面構成にブレや揺らぎが生じてくる。普通ならばマイナス要因になりそうなのだが、この“スナップの天才”にかかると、それすらも面白いものに見えてくるから不思議だ。若い女の子を撮影した何枚かの写真には、明らかに彼女たちが発するエロスへのストレートな条件反射があらわれていて、ぬけぬけとそういう写真も出してくることに思わず笑いがこぼれてしまった。最近どうも肩が凝る写真ばかりが目につくので、こういう渋い味わいのスナップショットが妙に気になってしまう。
2010/03/18(木)(飯沢耕太郎)