artscapeレビュー
中川道夫『上海双世紀 1979-2009』
2010年04月15日号
発行所:岩波書店
発行日:2010年2月
中川道夫の写真集は、世紀をまたぐ約30年の上海の変貌を浮かびあがらせる。最初の二枚は、いずれも外灘から浦東を眺める写真だが、四半世紀の時間の流れは対岸をまったく違う世界に変えてしまった。いわゆる建築写真ではない。むしろ、それぞれの時代のまちの人々がとらえられている。匂いと音が聴こえてきそうな写真だ。ちなみに、冒頭に数枚ある21世紀はカラー、残りの前世紀の写真は白黒である。筆者がはじめて上海を訪れのは約20年前であり、当時はまだ昔の日本の映像を見るかのようなセピア色のイメージだったことをよく覚えている。だが、その後の上海はすさまじい勢いで未来都市に変貌した。今年は上海万博も開催される。もしかすると、将来は、日本が昔の中国のようだと思われるのかもしれない。
2010/03/31(水)(五十嵐太郎)