artscapeレビュー
2011年09月15日号のレビュー/プレビュー
第一回art Nagoya 2011
会期:2011/08/06~2011/08/07
ウエスティン ナゴヤキャッスル 9F エグゼクティブフロア[愛知県]
すでに東京、大阪で何度かやっている、ホテルの各部屋に現代アートのギャラリーが展示するスタイルが、ついに名古屋でも開催された。規模はワンフロアのみで小さかったが、東京や大阪に比べて、場所が圧倒的にいい。ホテルの窓から名古屋城が真正面に見える。考えてみると、四国でも旅館の各部屋を使うアート・イベントがあったし、いまは存在しない名古屋のさくらアパートメントは元旅館の各部屋にデザイナーのショップを展開していた。こうした催し物は、次々に隣の部屋の内部を順番に見ることができるという非日常的な空間の体験が楽しい。
2011/08/07(日)(五十嵐太郎)
生誕100年記念「フェリックス・ホフマン展──うつくしい絵本の贈りもの」
会期:2011/07/16~2011/08/28
伊丹市立美術館[兵庫県]
スイスの絵本作家、フェリックス・ホフマンの生誕100年を記念して開催された展覧会。絵本や原画、ステンドグラスの下絵や壁画の仕事などさまざまな仕事が紹介されていたが、特に印象的だったのが彼がまだ若いときに幼い我が子に宛てて書いたいくつかの手紙だった。身近な動物や人々などのスケッチとその場面の状況が詳細に記された手紙はみずみずしい描写で、いちいちその光景が目に浮かぶよう。会場の一番最初のコーナーに展示されていたそれらは、彼の絵本制作やその後の数々の活動の支軸をなすものであることも明示していた。大胆な構図で描かれた挿絵がリズミカルに展開して物語をよりドラマチックに盛り上げていた《ラプンツェル》や《ねむりひめ》など、自然の描写が美しい絵本ももともとは娘のために描かれたもの。父親のまなざしという点がその絵の魅力に大きく関わっていることを知った展覧会。内容もボリュームも充実感があった。
2011/08/07(日)(酒井千穂)
青木淳「ぼよよん」展
会期:2011/07/26~2011/08/12
オカムラガーデンコートショールーム[東京都]
会場いっぱいに、輪っかが展開する。8,000個のポリプロピレン製のリングが組み合わさった「ぼよよん」の雲、という見立てのインスタレーションだ。ユーモラスな擬態語が作品名になっているのが興味深い。手で触ると、ぼよよーんと揺れるし、音もぼよよーんと鳴りだす。動きと音と名前が同じもののように思えてくる。確かに、ぼよよんというしかないモノだ。
2011/08/08(月)(五十嵐太郎)
アラヴェナ展
会期:2011/07/27~2011/10/01
TOTOギャラリー・間[東京都]
派手なインスタレーションが多かったヴェネチアビエンナーレ国際建築展2008において、住人の希望を描いてもらったシンプルな住宅の紙模型ながら、銀獅子賞を受賞したエレメンタル、すなわちチリの建築家アラヴェナが日本で初めて本格的に紹介された展覧会である。最近の日本の傾向とは違う、力強い形が印象的だ。やたらとスペックを付加するのではなく、何かを外し、デザインの根本を再考する姿勢を打ち出している。
2011/08/08(月)(五十嵐太郎)
「小さな建築のスタディ」展
会期:2011/08/06~2011/09/06
チーム・ラウンド・アバウトのキュレーションによる、3.11以降を意識した15組の若手建築家のプロジェクト展である。小さな、かわいらしい模型を並べ、壁にドローイングを貼っていく。松岡聡・田村裕希による壊れた開口部からの増築や、垣内光司による基礎花壇にそえた小さな構築物など、興味深いプロジェクトが出品されている。
2011/08/08(月)(五十嵐太郎)