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2012年06月01日号のレビュー/プレビュー

植松奎二 展 軸─重力・反重力

会期:2012/05/26~2012/06/23

ギャラリーノマル[大阪府]

ベテラン作家の植松奎二が、1970年代から80年代初頭に集中的に制作していた木材とジャッキによるインスタレーションを再構成した。画像を見ると3本の木材に黄色い布地をくくりつけたように見えるが、実際は木材2本を縦に並べた状態×3であり、布地は木材の接続面に挟まれている。木材とジャッキが放つ剛性のテンション(push)と、布地の柔らかな曲線が醸し出す柔性のテンション(pull)の対比が美しい。また、紡錘形の鉄板を10枚積み上げた形の大作や、ドローイング、小品、記録映像も展示されていた。このような企画は本来美術館で行われるべきものだが、残念なことにいまの関西ではそうした企画はほとんど行なわれない。意義深い企画を実行した画廊に拍手を送りたい。

2012/05/26(土)(小吹隆文)

プレビュー:対話する美術/前衛の関西

会期:2012/06/09~2012/07/29

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

1972年の開館以来、現存作家の展覧会を積極的に開催し、作品を収集してきた西宮市大谷記念美術館が、開館40周年を記念してそれらを一堂に展覧する。作家は、須田剋太、津高和一、元永定正、白髪一雄、村上三郎、松谷武判、植松奎二、藤本由紀夫、石原友明、パラモデルなど17作家で、戦後から今日に至る関西の現代美術を振り返るラインアップとなっている。関西では、地元の現代美術作家を紹介する企画展の不足が慢性化している。館蔵品による一種のレビュー展とはいえ、小さな市立美術館が気を吐く姿には頼もしい。

写真=パラモデル《残存と消失の風景♯001》2010年

2012/05/27(日)(小吹隆文)

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プレビュー:淀川テクニック個展─はやくゴミになりたい

会期:2012/06/16~2012/07/08

ARTZONE[京都府]

大阪・淀川を拠点に活動し、河川敷のゴミを素材にした作品で知られる淀川テクニックが、京都に登場。過去の代表的な作品やドキュメンタリー映像と共に、鴨川で収集した素材による新作インスタレーションを展示。また、鴨川でワークショップを行ない、拾ったゴミの履歴書を制作する。実は関西での発表が少なかった彼らだけに、この機会は貴重である。

2012/05/27(日)(小吹隆文)

プレビュー:康本雅子『絶交わる子、ポンッ』/五反田団『宮本武蔵』/柴幸男(ままごと)『朝がある』

今月は公演が盛りだくさん。迷いますがマストは康本雅子『絶交わる子、ポンッ』(2012年6月28日〜7月1日@シアタートラム)。先日NHK『課外授業ようこそ先輩』にも出演していた彼女のじつに4年ぶりの単独公演。00年代に日本のコンテンポラリー・ダンスが意気揚々と誇示していた〈ポップで、ひねりが利いていて、リアルなダンス〉を、いまどんなかたちで展開してくれるのだろうか、期待が膨らむ。タイトルがまた康本らしい! 演劇では五反田団の『宮本武蔵』(2012年6月8日〜17日@三鷹市芸術文化ホール星のホール)が見たくてたまらない。「剣豪演劇」などと自称しているが、きっとふざけている。本番の舞台でふざけるという、よく考えるとなかなか大胆で自由で演劇批評的なことを前田司郎はやってのける。同じホールでは柴幸男(ままごと)の新作『朝がある』も行なわれる予定(2012年6月29日〜7月8日@三鷹市芸術文化ホール星のホール)。これは三鷹市の偉人「太宰治作品をモチーフにした演劇」という企画の第9回として柴が招かれて実現するもの。しかも柴が今回とりあげるのは女の子の1人語りがいま読んでも十分リアルな『女生徒』! これは、楽しみだ。

ままごと『朝がある』イメージビデオ

2012/06/01(金)(木村覚)

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