2020年10月15日号
次回11月2日更新予定

artscapeレビュー

2013年10月15日号のレビュー/プレビュー

六本木クロッシング2013[アウト・オブ・ダウト]展

会期:2013/09/21~2013/01/13

森美術館[東京都]

出品作家は30代前後の若手を軸に、中村宏(81歳)、赤瀬川原平(76歳)、中平卓馬(75歳)、菅木志雄(69歳)ら70代前後の長老組がちらほら混じる奇妙な人選。中堅と呼べるのは柳幸典ただひとり。いいかえれば、70-90年代に登場し、いまもっとも脂ののっているアーティストたちがごっそり抜け落ちているということだ。なんでこんな奇妙な人選になったのか、というより、この奇妙な人選こそ今回の「クロッシング」の狙いなのかもしれないと思えてきた。たとえば、最初のほうに絵に描いたような社会批判を木版に彫る風間サチコが出品しているが、その隣に60-70年代の赤瀬川原平の風刺画を並べ、明らかに対比させている。昔こんなことやってた先輩がいるんだよと。そう考えると、ルーマニアに行って社会主義者を胴上げしたり、日本共産党にマルクスの肖像を掲げるよう頼みに行く丹羽良徳のパフォーマンスも、かつてだれかが似たことをやってたような気がしてくる。今回は出てないが「半刈りにしてハンガリーに行く」などはこれに近い。モニターとプロジェクターの映像を巧みに組み合わせた泉太郎も、他人の個展をプロデュースして自分の作品にしてしまう奥村雄樹も、今回のなかではもっとも優れた部類に入ると思うが、どこか既視感がぬぐえないのも事実。それは仕方がないことで、これだけ表現メディアが拡散してしまうと、逆にやることが似通って見えてしまうからだ。むしろ絵画なら絵画という形式にこだわったほうが多様性が担保できるような気がする。今回もっとも印象深かったのは中村宏と千葉正也で、どちらも絵画だったのは偶然ではないだろう。まあ未知の若手がことごとく期待はずれだったというのも大きいが。

2013/09/20(金)(村田真)

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MAMプロジェクト019:エムレ・ヒュネル

会期:2013/09/21~2013/01/13

森美術館[東京都]

トルコのアーティスト。暗いギャラリーに三角錐の白い物体がドンと鎮座し、壁にはドローイングが掛けられ、映像が流れている。「文明社会とその未来について問いかける作品」らしいが、目に止まったのは「太陽の塔」を描いた1点のドローイングだけで、あとの視覚情報は網膜を素通りして脳内のゴミ箱行き。

2013/09/20(金)(村田真)

大﨑のぶゆき「T」

会期:2013/09/17~2013/09/28

gallery 16[京都府]

描かれた絵や壁紙のイメージが溶けて崩れ落ちていくという映像作品を国内外で発表している大 のぶゆき。京都では数年ぶりの個展が開催された。今展で発表されたのは、友人“T”の記憶をもとに制作された3点のインスタレーション作品。“T”から聞いた子どもの頃の思い出とそれらにまつわる写真などを手がかりに、大崎自身がその場所に足を運んだりインターネットで調べたりして取材を行ない、“T”の記憶を「トレース」するというものだった。取材をするなかで大﨑は“T”の記憶自体に曖昧で不確かな点があることを知ったという。絵が流れ落ちるように溶け崩れていく映像、ミニカー、カメラ、当時撮影されたと思しき“T”の家族の写真(複製)など、複数のもので構成された作品は、“T”の体験に想像をめぐらせ、物語を連想させる。それは、“T”本人の思い出、それを「トレース」した大 、そして鑑賞者の想像という重層的なフィクションで覆われていくものでもあり興味深く思った。記憶という情報の頼りないのあり様がいっそう儚く感じられる雰囲気も表現も魅力的だった。

2013/09/21(土)(酒井千穂)

井上裕加里「小さな世界」

会期:2013/09/17~2013/09/22

KUNST ARZT[京都府]

対面するように設置されたモニタでそれぞれ、土を詰めた大きな袋を引き摺りながら作家自身が街中を歩く映像が上映されていた。引き摺られ、破れた袋からは土が少しずつ漏れ出し地面に撒かれ、歩くたびに後方にラインを引いていく。よく見ると二つの映像は、街中の背景が異なることにも気がつくのだが、聞くとこれは日本と韓国でそれぞれ行なわれたパフォーマンスなのだそう。日韓の領土をめぐる二国の関係にアプローチする作品で、撒かれていく土は「領土」を象徴していた。会場ではほかに、赤と白の帽子と体操着を身につけた二人の女の子がそれぞれ日本語と韓国語で「It's a small world」を歌いながら砂場の砂山を取り除く「旗とり競争」ゲームを延々と続ける映像作品《It's a small world》、実際にある高校のクラスで協力してもらった作品で、クラスのメンバーを一人ずつ指名し、教室から除外していくという作品《grouping》も上映されていた。国家間やひとつのコミュニティにおける人間関係など、重く扱いにくいとも言える問題に触れているが、現実社会の情け容赦ないあり様を鋭くもあっさりと表現する井上の作品にはスマートな魅力があり印象に残った。また、《it's a small world》には韓国語と日本語両方の手書きの対訳歌詞も展示されていた。各言語の歌詞を対比させるというだけでなく、このメジャーソングのレトリックにも目を向ける井上の眼差しも感じられるものだった。

2013/09/21(土)(酒井千穂)

ドリフターズ・サマースクール2013成果発表『ココ』

会期:2013/09/21~2013/09/22

さくらWORKS〈関内〉[神奈川県]

縁あって今日は立て続けに演劇を2本見る。うち1本は「演劇」というより観客参加のパフォーマンスアート。もう1本(悪魔のしるし公演『悪魔としるし』)も昔よく見た「演劇」に比べればはるかにアートっぽいけどね。ドリフターズ・サマースクールは、リーフレットによれば「ダンス・ファッション・建築・デザインといった異なるジャンルでプロフェッショナルを目指す若者が集い、相互に刺激を与えながら作品を生み出していく〈新しい創作の場〉として、2010年に横浜でスタート」した集団。まずは受付でクジを引き、それぞれ引き当てた指示書どおりにビル内を動き回る。ぼくはカゴを手に、廊下や階段に置かれた植木鉢のなかの野菜を集める役。その後ビルの屋上に全員集合し、机を並べて授業が始まる……というような展開。おもしろかったのは、屋上に上って初めてこのビルが「コ」の字のかたちをしているのに気づいたこと。だけでなく、隣のビルの屋上でもパフォーマンスが繰り広げられるのだが、隣のビルも「コ」の字型をしているのだ。最後になってようやく「ココ」というタイトルの意味がわかる仕掛け。

2013/09/21(土)(村田真)

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