artscapeレビュー
2014年09月15日号のレビュー/プレビュー
建築家ピエール・シャローとガラスの家
会期:2014/07/26~2014/10/13
パナソニック 汐留ミュージアム[東京都]
ピエール・シャローが、初期の多色によるアール・デコ様式での成功から一転し、白のモダニズムに変わり、設計変更を重ね、歴史に残る着想が舞い降りた経緯がていねいに紹介される。もっとも、モダニズムの傑作、ガラスの家を発表した後は意外にぱっとしない。ただ、彼の建築的というよりも、家具的、あるいは可動のインテリア的な手法は一貫している。
2014/08/02(土)(五十嵐太郎)
サミュエル・ベゲット展─ドアはわからないくらいに開いている
会期:2014/04/22~2014/08/03
早稲田大学坪内逍遥博士記念博物館[東京都]
オープンキャンパスでにぎわう早稲田大を訪れ、演劇博物館、サミュエル・ベケット展「ドアはわからないくらいに開いている」の最終日へ。『ゴドーを待ちながら』の初演、ほかの作品の記録、あいちトリエンナーレ2013のパフォーミング・アーツ部門におけるベケット関連のプログラム、また戦地・被災地や日本におけるゴドーの受容が手際良くまとめられている。音や映像も楽しめる工夫がなされており、演劇の展示手法の可能性を感じることができた。
2014/08/02(土)(五十嵐太郎)
加瀬才子──ドローイング展
会期:2014/05/17~2014/08/02
美術待合室[東京都]
尾山台の医院の待合室に作品を展示。10点足らずのドローイングながら1点1点緻密に描かれてることもあって、中身は濃い。画面を細かく埋めていくところは一見アウトサイダーアート風だが、狂人にはなりきれず、かといって天才にもなれず、不安定ながらもかろうじてバランスを保っているような絵。このような不穏なものを医院に飾っていいのか? 医院です。
2014/08/02(土)(村田真)
ランドマーク・プロジェクトV──関本幸治
会期:2014/08/01~2014/11/03
関内周辺[神奈川県]
BankARTが企画したヨコトリの連携プログラムで、横浜市内の歴史的建造物や忘れられた場所にアートを挿入する試み。全部で8カ所あるが、今日見たのは馬車道のレトロなビルの壁に展示した関本幸治の肖像写真。和服を着た庇髪の4人の女性像だが、じつはこれ、フィギュアにキモノを着せて撮ったもので、すべて手づくりだという。これは手が込んでいる。約150年前の幕末、馬車道で下岡蓮杖が日本で最初の写真館を開いたというから、蓮杖へのオマージュにもなっている。でも風景に溶け込んでいて、注意しなければ写真作品だと気づく人は少ないんじゃないか。ましてそれがフィギュアであるなどとは。
2014/08/04(月)(村田真)
YKKの関連施設
[富山県]
黒部にて、YKKの関連施設を見学する。槇文彦の《前沢ガーデンハウス》(1983)は、当時のポストモダン色も少し入っているが、30年以上たっても古びれていないことに感心させられた(1983)。槇事務所の系列では、大野秀敏や宮崎浩らもYKKの施設やリノベーションを手がける。ほかにヘルマン・ヘルツベルハーの国内唯一の作品《YKKの黒部寮》(1998)、teonksによるオランダ派的な造形の《黒部堀切寮》(1999)、マンジャロッティ・アソシエイツの基本設計による《レセプションハウス》(2014)など、興味深い作品が多い。そして《レセプションハウス》において、ヤギ牧場でとれた美味しいチーズをいただく。ちなみに、黒部はYKKの関連施設以外でも、新居千秋の《黒部市国際文化センター「コラーレ」》(1994)、ロン・ヘロン、長谷川逸子、栗生明、アルセッドらによる公共施設が点在しており、地方の町とは思えない相当な建築密度である。
2014/08/07(木)(五十嵐太郎)