artscapeレビュー
2016年08月15日号のレビュー/プレビュー
安田佐智種 VOID
会期:2016/07/04~2016/07/30
ベイスギャラリー[東京都]
今日は歩いて日本橋界隈のギャラリー巡り。まずは茅場町のベイスギャラリーへ。画面の中心からビルが放射状に広がってる写真で、よく見ると東京、パリ、ニューヨークなど大都市の俯瞰写真であることがわかる。スカイツリーやエッフェル塔など各都市のいちばん高い場所から周囲を撮り、コンピュータで画像をつなぎ合わせた写真だが、パノラマ写真と違って360度だけでなく、その下の半球状の視野までほぼカバーしている。地図と同様、球面を平面に置き換えるとズレが生じてくるが、そこはパッと見わからないようにデジタル処理してある。正方形の画面もあるが、大きな紙を2、3枚つなげてコラージュ風にした作品もあり、いわばホックニーのフォトコラージュのデジタル版だ。地図好きにはたまらない写真。もう1点、古代の廃墟を真上から空撮したような幅4メートルを超す大作がある。これは福島県の被災地で、津波によって土台だけ残った家の跡を歩きながら、目の高さから真下を撮ってつなげたもの。床板、柱の基底、バスタブ、便器などが確認でき、ときおり作者の靴先が写っている。何十軒もの家の跡をつなげているので、全体で巨大な廃墟のように見えるのだ。これはお見事。
2016/07/23(土)(村田真)
宮間夕子個展 神秘も狂気も太陽の渦
会期:2016/07/09~2016/08/06
マサタカコンテンポラリー[東京都]
東京駅にほど近いマサタカコンテンポラリーへ。以前、別のギャラリーが入っていたビルの地下だが、降りていくとSansiao Galleryというのがあって、一瞬間違えたかなと思ったら、その奥に宮間夕子の作品と本人を発見。宮間は何度かBankARTのスタジオで制作したことがあり、そのとき描いていた幅4メートル近い大作を中心に展示している。彼女が描くのは魔女ランダのようなアジアの神や精霊であり、その神秘的なエネルギーであり、その力を呼び起こす長い髪や装身具だ。綿布に白亜を塗ってフラットにした上に、油彩とテンペラで丁寧に描いている。奥の細長い部屋には、サラッと描いた下描きの線描を赤い紙にコピーして切り抜いたものが数百枚、壁に貼られている。これを見ると達者な線描であることがわかる。
2016/07/23(土)(村田真)
新解釈・花鳥風月
会期:2016/06/11~2016/07/23
Sansiao Gallery[東京都]
ついでに隣のSansiao Galleryも見る。ニキ・ド・サンファルの立体もあれば北斎の浮世絵もある。いったいどういう選択だろうと思いながら見ていたら、ヘタクソな風景画の隣にポロックのドリッピング絵画が並んでいたので驚いた。なんという落差。そしてもっと驚いたのは、風景画のほうがじつはポロックの1936年の作品で、ドリッピング絵画はマイク・ビドロのアプロプリエーションだったこと。一気に逆転、まいりました。
2016/07/23(土)(村田真)
三越アートキューブ
会期:2016/07/20~2016/07/25
日本橋三越本店新館7階催物会場[東京都]
日本橋三越に寄る。会場には日本画も洋画も現代美術も、若手もベテランも物故作家も、玉石混淆の200点が展示されている。総じて日本画は洋画より価格が高めで、片岡球子《富士》の2千万円を筆頭に1千万円以上がごろごろある。対して洋画は1、2ケタ少ないのが大半。例外は白髪一雄と草間彌生で、どちらも3千万円以上だが、これらは洋画というより現代美術か。そんなことはどうでもいい。ぼくがここに来たのは久松知子の作品が見たかったから。デビュー作《日本の美術を埋葬する》をはじめ、新作、旧作そろえている。肝腎のお値段は、幅5メートル近い超大作《日本の美術を埋葬する》でも200万円に満たない。無理すりゃぼくでも買えないことはないけど、買わないのは金がないからというより、置く場所がないからだ。
2016/07/23(土)(村田真)
トランス/リアル─非実体的美術の可能性vol.3 末永史尚・八重樫ゆい
会期:2016/07/16~2016/08/27
ギャラリーαM[東京都]
東神田のαMへ。梅津元企画「トランス/リアル─非実体的美術の可能性」の3回目は、末永史尚と八重樫ゆいの2人展。末永は5点ほどの《絵》を壁に掛けずに立て掛けている。表に描かれた格子はキャンバスの木枠。とすれば、裏面が絵でいう表になり、それぞれ異なる単色で塗られている。格子模様の抽象画ともいえるし、キャンバスを原寸で描いた具象画ともいえる。見逃せないのは側面に絵具の滴りが残されていることで、これによって絵画らしさが強調されている。八重樫は小さなキャンバスに水平または垂直方向にストライプを描き、別方向から別の色彩のストライプを描いて画面を埋めていく。例えば《chart》は幅広い刷毛を使ったため、色面抽象のような画面ができあがり、《フィルバート》は穂先の丸いフィルバートという筆で描いたため、塗り始めが丸くなっている。ふたりとも「絵画」をテーマにした絵画といえる。
2016/07/23(土)(村田真)