artscapeレビュー

2016年08月15日号のレビュー/プレビュー

プレビュー:S/N×ガールズ・アクティビズム パフォーマンス『S/N』記録映像上映&トーク

会期:2016/09/10~2016/09/11

同志社大学 寒梅館 クローバーホール[京都府]

7月、古橋悌二《LOVERS》の展示期間中に行なわれたダムタイプの作品上映会で、『S/N』(1994年初演)を見逃した方へ。ゲイや障碍者といったマイノリティの問題を扱っていると考えられることが多い『S/N』だが、記録映像の上映と合わせたトークでは、「女性のセックスワーカー」「パスポートコントロールを受ける日本人女性」が作中に登場することに焦点を当て、「女性」という視点から『S/N』を考える予定だという。弾丸のように繰り出されるテクストの投影、モノローグ/ダイアローグの挿入など、情報量の多さとあいまって、見る度に新たな思考を触発する『S/N』とともに拝聴したい。

2016/07/31(日)(高嶋慈)

感覚のあそび場─岩崎貴宏×久門剛史

会期:2016/07/26~2016/09/11

京都芸術センター[京都府]

日用品を解体・再構築して繊細なオブジェをつくり、見立てを駆使して意味やスケール感の転倒をはかる岩崎貴宏と、音や光といった現象をモノや空間と組み合わせ、時空間をそっと揺さぶるようなインスタレーションを手がける久門剛史の2人展。
岩崎の《アウト・オブ・ディスオーダー(コラプス)》は、綿棒、歯ブラシ、タオル、モップなど「白い清掃用具」を組み合わせて、植物が生い茂る野原の中に「壊れた送電塔」が佇む風景のジオラマをつくり上げている。不気味な樹海のように繁茂する植物群、壊れて放置されたままの送電塔…。福島第一原発周辺地域を否応なく連想させるこの風景は、病的な白さで覆われている。その「白」は、原子力エネルギーの「クリーンさ」への皮肉とも、「汚染の除去」を待つ土地への示唆とも受け取れる。また、壁面に展示された《コンステレーション》は、一見すると、夜空にきらめく無数の星の美しい写真に見えるが、白い光の粒をルーペで拡大して見ると、コンビニやファーストフード店、クルマのメーカー、大手小売チェーン店の極小のロゴが混ざっている。小麦粉やベビーパウダーがバラ撒かれてできた一つひとつの点は、民家の灯りだろうか。「夜の日本」を上空から俯瞰した電力消費図が、極めて美しい星空の光景とのダブル・イメージとして重ね合わせられている。
一方、久門の《after that.》は、鏡面でできた時計盤を何十個も組み合わせてミラーボールを形づくり、光の反射が空間全体に乱舞する幻想的なインスタレーション。動かないはずの部屋そのものが回転し、あるいは足元の床がぐるぐると回っているような錯覚に全身が包まれる。また、和室を使った《Quantize #6─明倫小学校 和室─》では、ライトの明滅や、雨音や鈴虫の鳴き声などの音響的仕掛けが施されることで、室内/外の境界や時間感覚を撹乱させ、空間内に独自のリズムが息づいていく。
見立てや擬態といった空想的な手法によって、電力の消費という問題を日常生活へ直結させる岩崎と、「いまここ」の確かさを揺るがし、複数の知覚的現象へと開いていく久門。想像力のそれぞれのありようが対照的に示された展示だった。

2016/07/31(日)(高嶋慈)

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トーキョーワンダーウォール公募2016 入選作品展

会期:2016/07/16~2016/07/31

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

毎年、東京都現代美術館でやっていた公募展だが、都現美が休館中のためTWSで3期に分けて開催。その2期目。浜口麻里奈は画面いっぱいに淡い色調の植物パターンで埋め、ところどころ人物(天使?)らしき姿を浮遊させている。画面に中心がなく、地味といえば地味な装飾画だが、それゆえに類例を見ないオリジナリティがある。池上怜子はパネルに布を貼り合わせ、本紙(中央の絵の部分)や風帯(上方の2本の縦の帯)など表装した掛軸のように仕立てている。中央部をコマ割りにし、一部を脱色するなど絵画的工夫もあって、これも類例を見ない。ふたりとも卒制展かなにかで見たことあるなあ。

2016/07/31(日)(村田真)

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ジブリの立体建造物展

会期:2016/07/15~2016/09/25

豊田市美術館[愛知県]

豊田市美へ。「ジブリの立体建造物」展は超激混みだった。東京での展示を見逃したが、韓国への巡回などを経て、コンテンツは増えているらしい。アニメの展示にありがちな動画は一切使わず、背景画となる建築に焦点を当て、そのデザインや時代背景についての藤森照信の解説をキャプションで付す。だが、おそらく来場者は空間の絵を見て、脳内で映像を再生していたはずだ。アート作品に比べて、絵の数が多く、サイズが小さいことから、大空間を小分けの部屋の連鎖に変え、8つのゾーンで展開する。圧巻は油屋の巨大模型だった。ほかにもハイジやポニョの模型もあり、竹中大工道具館も協力している。

2016/07/31(日)(五十嵐太郎)

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杉戸洋 ─こっぱとあまつぶ

会期:2016/07/15~2016/09/25

豊田市美術館[愛知県]

杉戸洋「こっぱとあまつぶ」展は、あいちトリエンナーレ2013の名古屋市美術館と同様、通常の順路と真逆のルートを設定することによって、親密な小部屋から始まる。また紫やピンクの床カーペットとトップライトが空間に独特の色味を与え、ただ絵が並ぶだけではない展示が楽しめる。後半は触ると動く青木淳のぼよよん小屋や家具、スタジオ・ヴェロシティのフラジャイルなインスタレーションが絡まり、空間に揺らぎを与える。

2016/07/31(日)(五十嵐太郎)

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2016年08月15日号の
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