artscapeレビュー
2016年08月15日号のレビュー/プレビュー
オル太 カルタナティブスペース
笹岡由梨子「イカロスの花嫁」
会期:2016/07/09~2016/07/30
ギャラリー・ジン・プロジェクツ[東京都]
今年の岡本太郎現代芸術大賞展で特別賞を受賞した悪夢のような映像インスタレーションが、いまだ脳裏にこびりついている。今回の「イカロスの花嫁」もその延長線上の新作で、大きく引き延ばされた花嫁の目や口、ノスタルジックな音楽がクセになりそう。瀬戸内国際芸術祭でも異なる映像インスタレーションとして同時公開されるという。
2016/07/29(金)(村田真)
宇宙と芸術展
会期:2016/07/30~2017/01/09
森美術館[東京都]
これ以上ない大風呂敷を広げた展覧会。なにしろ「宇宙」だもん、あらゆる芸術を包含しかねない。展示は曼荼羅図に始まり、十二天像、キトラ古墳壁画の天文図(複製)、竹取物語絵巻、江戸時代の天文観測図と観測器、隕石でつくった《流星刀》、天体観測機器アストロラーベ、レオナルド・ダ・ヴィンチによる天文学のメモ(アトランティコ手稿)、ガリレオ・ガリレイの手稿、コペルニクスやケプラーによる天文学書の初版本、ツィオルコフスキーの天文学を巡る手稿、ユーリ・ガガーリンの写真、アポロ11号の資料、アンドレアス・グルスキー《カミオカンデ》、森万里子《エキピロティックス ストリングⅡ》、野村仁《ムーンスコア》、チームラボによる体験型の映像インスタレーションと続く。これを見ると、宗教、科学、芸術が未分化な前近代から、徐々に天文学が専門分化していく経過がわかり、最後に現代のアーティストがまたそれらを混ぜっ返そうとしているようにも見える。楽しみどころがたくさんあるし、よく集めたもんだと感心もするが、逆になんでこんなもんまで? と首をひねりたくなるようなものもある。例えばジア・アイリみたいな宇宙のイラストレーションを出すくらいなら、ジャクソン・ポロックのドリッピング絵画のほうがはるかに宇宙的だと思うのだが。
2016/07/29(金)(村田真)
スミルハン・ラディック展 BESTIARY:寓話集
会期:2016/07/08~2016/09/10
TOTOギャラリー・間[東京都]
「スミルハン・ラディック展 BESTIARY:寓話集」@ギャラリー間へ。久しぶりに、美しい建築展と遭遇した。むろん、オブジェ的な模型は懐かしくもある。最近、卒計イベントでもプロジェクトの「正しさ」が求められる傾向が顕著だが、こういう文学性や芸術性の強度で勝負する詩的なタイプの建築表現がめっきり減っているのは寂しい。
2016/07/29(金)(五十嵐太郎)
アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち
会期:2016/07/13~2016/10/10
国立新美術館[東京都]
アカデミア美術館のコレクションである。ベッリーニからティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ、バッサーノへと、静から動きを孕みながら、たたみかける前半の内容がいい。後半は肖像画やポスト・ルネサンスの展開だが、ややパンチ力に欠ける。同時開催のルノワール展の激混みとは好対照で、まばらな観客だったおかげで、とても見やすい。
2016/07/29(金)(五十嵐太郎)