artscapeレビュー
2009年05月15日号のレビュー/プレビュー
アートフェア東京
会期:2009/04/03~2009/04/05
東京国際フォーラム・展示ホール+東京ビルTOKIA・ガレリア[東京都]
茶室があったり古美術が目立つのは気のせいか。きっと現代美術系のギャラリーが隣のTOKIAビルにはみ出した分、展示ホールの古美術度が高まったのかもしれない。そのせいかどうか、なんか熱気が感じられないなあ。
アートフェア東京:http://www.artfairtokyo.com/
2009/04/02(木)(村田真)
万華鏡の視覚
会期:2009/04/04~2009/07/05
森美術館[東京都]
まず、これが新作展ではなく、コレクション展であることに驚かされる。しかも自分とこのではなく、よそんちのコレクションなのだ。たとえば、ブロック塀が爆発して破片が飛び散っているようなロス・カルピンテロスのインスタレーション。数百の破片が糸で吊るされているのだが、コレクションが巡回するごとにその場に行って吊るし直すのだろうか。最近日本でも人気のジム・ランビーによる床にテープを貼った作品も謎だ。床のサイズやかたちによって貼り方を変えるこの作品、いったいどうやってコレクションしてるの? つーか、このテープをコレクションしてるわけじゃないでしょうに。こんなコレクター泣かせの作品ばかり集めてるのがティッセン・ボルネミッサ現代美術財団で、その創設者はフランチェスカ・フォン・ハプスブルグ。もう名前からして大コレクター、大パトロンなのだ。
2009/04/03(金)(村田真)
国立トレチャコフ美術館展──忘れえぬロシア
会期:2009/04/04~2009/06/07
Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]
なんだ、まだワイエス展をやっていたのか。と、ボケをかましたくなるような外光派リアリズム絵画が並ぶ。革命以前の19世紀後半から20世紀初頭のロシア絵画を集めたもの。このリアリズム技法が、革命期のロシア・アヴァンギャルドを飛び越してその後の社会主義リアリズムに隔世遺伝したとすれば、ある意味納得がいく。
2009/04/03(金)(村田真)
カールステン・ニコライ「ポリ ステラ」
会期:2009/04/04
霞が関ビル[東京都]
日本初の超高層ビル、霞が関ビルのふもとに出現したパブリックアート。こういう不特定多数の人々が行き交う場所に彫刻を設置するとき、芸術性よりなにより安全性と耐久性が求められる。そのため形態的にも内容的にも角のとれた丸い作品が多くなりがち。その点、カールステン・ニコライの彫刻はカミソリのように尖っていて、不穏な輝きを宿している。このくらい刺激的でないと、わざわざ彫刻を置く価値がないだろう。
2009/04/04(土)(村田真)
野町和嘉「聖地巡礼」
会期:2009/03/28~2009/05/17
東京都写真美術館 地下1階展示室[東京都]
かつて1980年代~90年代の一時期、日本にも「ヴィジュアル雑誌の時代」が訪れかけたことがあった。『月刊PLAYBOY』(集英社)、『マルコポーロ』(文藝春秋)、『DAYS JAPAN』(講談社)といった雑誌が次々に創刊され、写真家をフィーチャーした特集が口絵ページを飾った。そんな時代にアフリカ、チベット、中近東と、文字通り地球を駆け回って活躍していたのが野町和嘉で、その圧倒的な迫力を備えた写真群は読者に衝撃を与えた。行動力と映像センスを兼ね備えた、こんなにスケールの大きな写真家が日本に出てきたことに驚かされたし、実際彼の『ナイル』や『サハラ』や『メッカとメジナ』などのシリーズは国際出版の写真集として次々に刊行され、世界中で読者を獲得していった。
今回の「聖地巡礼」展は、その野町の新作「ガンガー」を中心とした回顧展である。衰えない創作意欲とともに、今は彼のような写真家にとってきつい時代になりつつあることをひしひしと感じる展示でもあった。雑誌のインタビューでお会いした時、「かつては一つのジャンルで100人の写真家が食えていたのに、今は10人で充分になってきている」と語っていたが、これは掛け値なしの実感だろう。雑誌の廃刊が相次ぎ、特集記事などでもエージェンシーの写真の使い回しが目立ってきている。だがそれでもなお、ガンジス川の源流から河口までを宗教儀式を中心に撮影した「ガンガー」や、やはり2000年代になって集中して取り組みはじめた「アンデス」のシリーズなど、人間という存在の最も純粋な瞬間である「祈り」の場面に据えられた彼の視点には、いささかの揺るぎもない。大河の流れのようにゆるやかにうねりつつ進む写真展示。ずっと長く見続けていたいという思いに誘われる。
2009/04/05(日)(飯沢耕太郎)