artscapeレビュー

2009年05月15日号のレビュー/プレビュー

ラ・マシン 巨大クモパフォーマンス

会期:2009/04/16~2009/04/19

新港ピア、日本大通りなど[東京都]

横浜開港150周年を記念する「開国博Y150」のプレイベントとして、フランスのナント市から機械仕掛けの巨大クモ2匹が初上陸し、新港ピアから日本大通りまで練り歩いた。こういうイベントに使われるアート作品というのはたいてい見かけ倒しで、期待はずれに終わることが多い(しかも「アート」を口実にショボさを恥じない)のだが、これは予想以上にすごかった。まずなんてったってカッコイイ。外骨格的形態もカッコイイし、動きもいい。脚がワラワラ動くのだが、実際に動かしているのは車。その脚を操作する人たちも車も丸見えなんだけど、あえて隠そうとしないとこがカッコいいんだな。いちばんカッコよかったのは、そのあとについてくる楽隊。クレーン車の上で演奏してる。このへんは日本人には真似できない。つーより、せいぜい真似しかできない。

2009/04/19(日)(村田真)

植松未帆 展

会期:2009/04/14~2009/04/19

ギャラリーはねうさぎ[京都府]

初個展だという植松は大学生。表現や手法に関しての迷いが感じられる作品が多く、中途半端な印象もあったが、カラーペンで描いたドローイングはそんな若い作家の感覚や感情がストレートに表われていて、イメージの世界に惹き付けられるものがある。世代はひとまわりくらい違うし、本人はあまり読んだことがないそうだけれど、ちりばめられたモチーフには70年代の少女マンガのような雰囲気も。

2009/04/19(日)(酒井千穂)

小野さや香 個展──蟻ノ思ヒモ天ニ届ケ

会期:2009/04/10~2009/04/19

カフェ&ギャラリーりほう[京都府]

自身の祖母をモデルにした繊細な肖像画を発表してきた小野だが、今展では、さらさらと描いたイラストのようなシンプルな作品がメイン。月と木だけが描かれたものや蟻を描いた小さな作品が並んでいた。普通の民家の部屋のような会場の窓は開け放してあり、白いカーテンが風にそよいでいた。作品それぞれには小野らしい、哲学的なテーマもあるのだが、窓から射し込む夕日や風通しの良い空間がよく似合う清々しさに溢れていて気持ちが良かった。これまでとはずいぶん印象の違う新たな展開だったので、今後の展開も気になった。

2009/04/19(日)(酒井千穂)

DUALISM──小栢可愛 展

会期:2009/04/13~2009/04/25

大阪成蹊大学芸術学部スペースB[大阪府]

ギャラリーに入ると、始めに水の入った浅い水槽があり、両手を水の中に浸けるようにうながされた。中に弾力のあるビーズの球が入っていて、触るとゼリーのような感触。水の冷たさと柔らかいその感触に目が覚めていくようだ。この幕間のような時間を経たあとで展示を見せるという作家のさりげない演出がニクくとても気に入った。まだ2年生ととても若い作家だが、平面作品から写真、立体、それらを駆使したインスタレーションと、表現手法は多彩ですでに貫禄さえ感じる。自分自身の存在とその二面性を追究するというテーマもさることながら、彼女の観察力には一目置きたいところだ。今後の活動がとても楽しみ!

2009/04/20(月)(酒井千穂)

ルーヴル美術館展──美の宮殿の子どもたち

会期:2009/03/25~2009/06/01

国立新美術館[東京都]

「子ども」をテーマに時代やジャンルを超えた約200点の出品。やっぱり西洋だから聖母子像が多いが、子どものミイラもあれば子どもの遊び道具もある。それにしても、子どもがテーマにもかかわらず「死」のイメージがつきまとうのはなぜだろう。おそらくルーヴル美術館(に限らないけど)全体が死のイメージに包まれているのだが、そのなかから生(=成長)の象徴である子どもに焦点を当てることで、逆に「死」がオーバーラップしてくるのかもしれない。

2009/04/22(水)(村田真)

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