2017年08月01日号
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artscapeレビュー

大竹竜太展

2015年11月15日号

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会期:2015/10/03~2015/10/07

SUNABA GALLERY[大阪府]

一見シンプルなモチーフと構図だが、違和感がじわじわと染み出してくる不穏な絵画群だ。
何もない白い壁と床(ホワイトキューブの空間を思わせる)の前に立つ、女性像と男性像がそれぞれのキャンバスに描かれている。第一の違和感は、ジェンダーの区別に対応して採用された描写モードの落差である。ゲーム・アニメ風の美少女キャラクターとして描かれる女性に対し、妙にリアルに描かれる中年男性。無個性的で消費される記号として描かれる女性イメージと、現実に対応する固有性を備えた男性イメージ。その対比や落差は、一見「美少女キャラの萌え絵」をなぞりながら、その欲望の送り主たちの「現実の」姿を反転像として浮かび上がらせ、表象システムがはらむ視線の偏差や欲望のコード(「かわいらしく無害な美少女」)をあぶり出す。女性たちが虚構世界の住人であることに対し、男性像が「現実」と対応していることは、彼らとともに画中に描かれた、何かの部品か箱のような謎めいた白い構造体が、立体作品として絵画の前に置かれていることからも分かる。一方、女性たちには、水の溢れる水槽やバケツが配され、性的なコノテーションを伴うことが明らかだ。
第二の違和感は、人物たちの足元から立ち上がる「影」の形態である。白い壁を背に立つ人物たちは、どこか舞台の構造を思わせるが、強い照明を当てられたかのように彼ら/彼女らの足元から伸びる「影」は、手足のポーズや手に持った小道具から派生しつつ、不自然に歪み、半ば自律的な領域をひとりでに生き始める。三次元の物体の二次元への投影像であることをやめ、人物たちを背後から脅かすような不定形の塊や動物のようなシルエットへと変貌していくのだ。
これら全ては、滑らかでマットな乳白色の質感を持つ、独特の画肌とともに描かれている。これは、透明メディウムとアクリル絵具を何層も塗り重ねることでつくられているという。このように大竹の絵画は、二次元と三次元の往還やズレ(物体/影、キャラ/リアルな人物像)を根幹に据えながら、そこにジェンダー表象の問題を含ませ、マチエールの重層性、さらにはホワイトキューブという空間をも示唆し、様々な問題が多重的に重なり合う場としての絵画空間を構築していた。

2015/10/07(水)(高嶋慈)

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