artscapeレビュー

2012年12月15日号のレビュー/プレビュー

平等院養林庵書院 襖絵奉納記念:山口晃「山口晃と申します──老若男女ご覧あれ」

会期:2012/11/02~2012/12/02

ジェイアール京都伊勢丹7F 美術館「えき」KYOTO[京都府]

宇治の平等院に山口晃が描いた襖絵が奉納されることになった。今展は平等院養林庵書院襖絵の一般公開に併せて開催された展覧会。
ドローイング、油絵、立体、挿画などが一堂に公開された。私が訪れたときも会場は多くの来場者で賑わっていたのだが、お年寄りの姿が意外にも多く、その幅広い人気を思い知った。過去、現在、未来の入り混じる作品世界の愉快な発想と画力もさることながら、妄想とも言える(?)その空想力にも改めて感心した。個人的にこの会場の展示で気に入ったのが、“電柱の美”を「考現学」のスケッチのように数々描き、リポートした《柱華道》という一連の作品。描かれているのは架空の電柱で、たいへんバカバカしいのだが装飾やその意味などまで詳細に記されていたそれらにはリアルな説得力もあり、つい笑ってしまった。

2012/12/02(日)(酒井千穂)

山口晃・襖絵奉納記念「重要文化財養林庵書院」特別公開

会期:2012/11/03~2012/12/02

平等院養林庵書院[京都府]

通常は非公開の平等院養林庵書院へ。山口晃の襖絵の奉納にあたり、土曜と日曜のみ特別公開されていた。襖絵は、来迎図のスタイルで、蒸気機関車に乗って極楽浄土に向かう人々(死者)の情景が描かれたもの。三両編成の車両の乗り込み口には上品・中品・下品の文字が記されており、それに乗り込む人々の様子や、機関車に乗れず徒歩で向かっている人の姿も描かれていた。機関車の向かう先には京都タワーと京都駅。ユーモアの細やかさも構図の面白さもさすが!と思わされる作品。隣室に続く襖には平等院の藤棚に見立てて「南無阿弥陀仏」の文字が書き連ねられた襖絵が。この襖を開けたときに射し込む光は、浄土へ向かう人々を導く「白道」(浄土宗などで、極楽浄土に通じる白い道とされるもの)に見立てられているのだそう。襖絵もだが空間の構成も凄い。見ることができてよかった。

2012/12/02(日)(酒井千穂)

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カタログ&ブックス│2012年12月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

文化からの復興──市民と震災といわきアリオスと

著者:ニッセイ基礎研究所・いわき芸術文化交流館アリオス
発行日:2012年7月7日
発行所:水曜社
定価:1,890円(税込)
サイズ:210×150mm、274頁

福島第一原発から約40キロに立地する「いわき芸術文化交流館アリオス」では市民と一体となって文化による復興にチャレンジしている。
本書は震災直後の緊迫した状況を現場の声から振り返り、アリオスと地域のユニークな取り組みや東北3県の主要文化施設のキーパーソンらとの座談会、そして文化からの復興の意味を考える。震災後の未来を「文化の力」「アートの力」から展望し、公共文化施設と芸術文化の持つ可能性と、その役割について多方面から考察した本書は、地方行政関係者、指定管理者、市民団体やアーティストを始めとして、震災復興まちづくりに携わる全ての人、必読の1冊である。
水曜社サイトより]



photographers' gallery press no. 11

発行日:2012年11月15日
発行所:photographers' gallery
定価:2,490円(税込)
サイズ:257×182mm、328頁

2011年3月の東日本大震災と福島第一原発事故以来、被災状況などを記録した数多くの写真が撮影されています。災害を記録するとはどういうことか、この度の震災は写真というメディアに多くの問いを投げかけています。
本誌では、関東大震災直後の鉄道、圧倒的な規模の土砂災害、近代最大級のトンネル工事を記録した、3つの写真帖を約200頁にわたって収録し、伊藤俊治氏・平倉圭氏の書き下ろし原稿とともに、災害表象をこれまでにないかたちで捉え直します。また気鋭の執筆陣を迎え、これからの写真や美術、批評のあり方を導くような濃密な論考・対談を掲載いたします。
photographers' gallery サイトより]



超域文化科学紀要 第17号─2012

発行日:2012年11月30日
発行所:東京大学大学院総合文化研究科 超域文化科学専攻
サイズ:255×162mm 308頁

超域文化科学専攻所属教員と学生による研究論文集。比較文学比較文化、表象文化論、文化人類学という3つのコースが、それぞれのアプローチの特徴を生かし、様々な文化的・社会的現象を分析する場である。掲載される論文は、本専攻所属の教員による厳格な審査を経ている。
東京大学大学院総合文化研究科サイトより]



前田敦子はキリストを超えた──〈宗教〉としてのAKB48

著者:濱野智史
発行日:2012年12月10日
発行所:筑摩書房
定価:777円(税込)
サイズ:172×106mm 208頁

AKB48の魅力とは何か?なぜ前田敦子はセンターだったのか?
〈不動のセンター〉と呼ばれた前田敦子の分析から、AKB48が熱狂的に支持される理由を読み解いていく。なぜファンは彼女たちを推すのか、なぜアンチは彼女たちを憎むのか、いかにして彼女たちの利他性は育まれるのか……。握手会・総選挙・劇場公演・じゃんけん大会といったAKB48特有のシステムを読み解くことから、その魅力と社会的な意義を明らかにする。
圧倒的情熱で説かれる、AKB48の真実に震撼せよ!
筑摩書房サイトより]

2012/12/17(月)(artscape編集部)

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