2021年08月01日号
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大エルミタージュ美術館展──世紀の顔・西欧絵画の400年

2012年06月15日号

会期:2012/04/25~2012/07/16

国立新美術館[東京都]

エルミタージュ美術館の300万点を超えるコレクションから89点の絵画を選び、16世紀のルネサンスから20世紀アヴァンギャルドまで1世紀ごとに5章に分けて紹介。第1章はいきなりティツィアーノ晩年の《祝福するキリスト》で始まるが、あとはレオナルド派によるモナリザのヌード像や、当時としては珍しい女性画家ソフォニスバ・アングィソーラによる女性像が目を惹く程度。そういえばエルミタージュ美術館展て毎年のように開かれているから、今回も在庫一掃セール的な極東巡業かと思って第2章に足を踏み入れたら、そんなことなかった。父娘愛を隠れ蓑に近親相姦的ポルノを描いた《ローマの慈愛(キモンとペロ)》と、田園風景に理想世界を封じ込めたかのような《虹のある風景》の2点のルーベンスは見ごたえがあるし、レンブラントやヴァン・ダイクの卓越した肖像画もバロック的な重厚感にあふれた傑作。いやそんな知られた巨匠だけでなく、たとえばマティアス・ストーマーとヘリット・ファン・ホントホルストによるロウソクの火を光源にした2点の宗教画や、ホーホストラーテンのだまし絵的な自画像も見逃してはならない。むしろこれぞバロックといいたい。第3章では、小品ながらシャルダンの《洗濯する女》、闇を照らし出す光の表現が巧みなライト・オブ・ダービーの《外から見た鍛冶屋の光景》、牢獄から宮廷画家に成り上がったというリチャード・ブロンプトンの《エカテリーナ2世の肖像》、西洋美術館の出品作品よりずっとよかったユベール・ロベールの《古代ローマの公衆浴場跡》などが目を惹く。注目したいのは、ヴィジェ・ルブランとアンゲリカ・カウフマンというふたりの女性画家の自画像で、どちらも40代の自画像なのに20歳くらいにしか見えない。女性画家の特権か。第4、5章の近代絵画になると有名画家が目白押しになる分、特筆すべき作品は相対的に少なくなる。いやもう18世紀までで十分ともいえるが、唯一の例外がマティスの《赤い部屋》だ。サイズも意外なほど大きくて、他を圧倒する存在感を放っていた。

2012/05/02(水)(村田真)

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