artscapeレビュー
國府理 展「水中エンジン」
2012年06月15日号
会期:2012/05/22~2012/06/03
アートスペース虹[京都府]
國府理の新作展。ギャラリーに入ると、鉄製の台の上に1立方メートルの立方体の水槽が置かれていて、自動車のエンジンがその水中で稼働していた。排出ガスは接続されたダクトホースから屋外に排出される仕組みになっているとのことだったが、それでも会場は臭気に包まれていて空気が悪い。水槽の中は波だち、耳を近づけるとエンジンの稼動音とは別の唸るような振動音も聞こえてくるから少し不気味だ。この作品はほかでもなく、原発事故に着想を得たものだという。原発、車、家電や身のまわりの製品、それにわれわれの身体まで。なににおいてもだが、機能のプロセスやその構造の問題は、それが“正常”に機能しているときにはいつも意識から消えてしまう。周囲にガスを排出しながら動き続けるエンジンの様子は、科学技術的なシステムというだけでなく、そのような機能と人間(の目的)という存在の脈絡についても思いを巡らせた。
2012/05/31(木)(酒井千穂)