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マックス・エルンスト──フィギュア×スケープ

2012年06月15日号

会期:2012/04/07~2012/06/24

横浜美術館[神奈川県]

なんだろうこの展覧会。別に生誕(あるいは没後)何年という記念展でもないし、今年はドイツ年でもないし、いまなぜエルンストをやらなければならないのか、きっかけが見えない。もちろんそんな外的なきっかけなんかなくたって、学芸員がぜひやりたいと考えていい作品を集めてきたら、むしろそっちのほうが望ましいのだが、その点でもハンパ感が否めない。120点の出品作品のうち油彩画は30点のみで大半は版画。しかも版画は10点のシリーズでも1点と数えるから、実感としてはほとんど版画ばかりで、合間に油彩画がはさまってるという印象だ。出品は国内の美術館所蔵品が大半だが、そのなかで「いい作品」と呼べるのは、大阪市立近代美術館建設準備室の《偶像》と、京都国立近代美術館の《怒れる人々(訴え)》くらい。ほかの「いい作品」は、《期待》がミュンヘンのピナコテーク・デア・モデルネ、《ユークリッド》がヒューストンのメニル・コレクション、《嘘八百》がパリのポンピドゥー・センターといずれも海外の所蔵だ。あれこれイチャモンをつけてきて最後にいうのもなんだが、けっして悪い展覧会ではない。エルンストのすべてを知りたいという人は別にして、作品点数も適度だし、作品内容もバラエティに富んでいるうえ適度に刺激的なので、今日は時間があるからちょっと見に行くかって人にはおあつらえ向きといっていい。

2012/05/30(水)(村田真)

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