artscapeレビュー
中埜幹夫 展
2012年06月15日号
会期:2012/05/28~2012/06/02
Oギャラリーeyes[大阪府]
赤紫がかった茶色の色面の上に白いインクで描かれた泡か空気の微粒子のようなイメージの無数の細かい文様と、画面の上から下に流れる金色の帯。ギャラリーの三つの壁面に展示されていた一連の抽象絵画は、離れて見たときにはじめて、森の風景のイメージがあぶり出しのように浮かんできた。空間的な奥行きと広がりを感じるのと同時に、それぞれの画面の一部を覆うような無数の白い文様が時間軸となって、物語性を帯びたパノラマに見えてくるから不思議。全体に静謐な趣きがあるのだが、見る距離によって静止性と運動性の両方を感じることができる魅力的な作品だった。
2012/05/31(木)(酒井千穂)