artscapeレビュー

TWSエマージング176 二藤建人「不測に向かって放り込む」

2012年06月15日号

会期:2012/05/12~2012/06/03

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

この「TWSエマージング」シリーズはあまりメディアに取り上げられる機会が少ないようだけど、けっこう高い確率で新しい才能に出会える貴重な場だ。今回は同時開催されている4人とも「アタリ」で、打率10割。まず1階の二藤建人。養生したギャラリーの床に泥水のプールを設置して上にトタン屋根を被せ、その屋根に何カ所か穴を開けて水に溶いた石膏を下の泥水に流し込む。石膏が固まったころ、泥からその固まりを掘り出す。これが初日に行った作者のパフォーマンスで、その結果としてのインスタレーションと記録ビデオを展示している。これを見てちょっとなつかしい気分になったのは、70~80年代に戸谷成雄や黒川弘毅らが試みていた彫刻の原点回帰ともいうべき作業を思い出したからだ。彼らが試みていたのは、たとえば鉄を入れて固めた石膏から鉄を彫り起こしたり、無作為にできた鋳型にブロンズを流し込んだりするような、いわば「彫刻」と呼べるギリギリの作業であり、そこからもういちど彫刻概念をとらえ直そうとしていたのではないか。二藤はそれを知ってか知らずか、「彫刻とはなにか」をわかりやすくユーモラスに再構築してみせたのだ。

2012/05/23(水)(村田真)

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