artscapeレビュー
野村佐紀子「sex/snow」
2014年04月15日号
会期:2014/03/01~2014/03/18
Bギャラリー[東京都]
野村佐紀子(写真)、一花義広(リブロアルテ、写真集発行)、町口景(デザイン)、藤木洋介(Bギャラリー)のコラボによる写真展企画の第二弾。今回は物語性を強く意識した前作とは違って、野村佐紀子がここ20年あまりかけて積み上げてきた「闇─裸体─部屋」というテーマが、より深く追求されていた。男性の手、脚など身体の一部を、闇の中に宙吊りに浮かび上がらせるような眺めも手慣れたものだ。その意味では、意外性があまり感じられない展開と言えるが、「雪」というもうひとつのテーマ系との絡み(内と外の世界の対比)、大、中、小の写真36点をバランスよく配置した画面構成など、これまで以上に洗練された美意識を、細部まで手を抜かずに発揮している。
特筆すべきは、リブロアルテから同時期に発行された同名の写真集(300部限定)の出来栄えで、点数が43点に増え、写真の並びも写真集のページをめくっていく速度、感触にあわせるように、厳密かつふくらみのあるものになってきている。ここではグラフィック・デザインを担当した町口景(町口覚の弟)の能力が、充分に発揮されていると言えるだろう。どうやら、この野村佐紀子の連続展示は、内容的に一貫したものではなく、その度ごとに形を変えながら続いていくことが予想される。ただ、あまりいろいろな方向に分散してしまうのも、ちょっともったいない気がする。前にも書いたのだが、全体を眺め渡す視点から書かれたシナリオが必要になってくるのではないだろうか。
2014/03/07(金)(飯沢耕太郎)