artscapeレビュー
ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡展
2014年04月15日号
会期:2014/02/11~2014/03/23
渋谷区立松濤美術館[東京都]
高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之が1963年5月に開催した「第5次ミキサー計画」に際して結成され、公式的には1964年10月の「首都圏清掃整理促進運動」まで継続したアート・パフォーマンス・グループ、ハイレッド・センター(Hi-Red Center、以下HRC)。本展は多くの作品・資料を通じて、その全貌と正体を詳らかにしようとする意欲的な企画である。
ここでは、HRCと写真メディアについてあらためて考えてみることにしよう。彼らの代表作のひとつである帝国ホテルを舞台とした「シェルター計画」(1964年1月)では、来客を前後左右、上下から撮影したり、赤瀬川原平の「模型千円札」では、本物の千円札を写真製版で印刷したりするなど、HRCは積極的に写真を作品に取り込もうとしていた。だが、より重要なのは、彼らのメインの活動というべき「直接行動」(パフォーマンス)が、写真なしでは成り立たなかったということである。ロープを至るところに張り巡らせたり、ビルの屋上からさまざまな物体を落下させたり(「ドロッピング・ショー」1064年10月)、都内各地の舗道などを雑巾で「清掃」したりする彼らの活動は、そもそも一過性のものであり、写真を撮影しておかないかぎりは雲散霧消してしまう。パフォーミング・アートの記録の手段として、写真は大きな意味を持っているが、HRCにおいてはまさに決定的な役割を果たしたと言えるだろう。
その意味では、記録者(写真家)の存在も大きくなるわけで、「ドロッピング・ショー」や「首都圏清掃整理促進運動」を撮影した平田実の写真などは、その写真家としての能力の高さによって、単純な記録を超えた価値を持ち始めていると思う。もしもこれらの写真が存在せず、作品とテキストだけの展示だったとしたなら、HRCの活動の面白さはほとんど伝わらないのではないだろうか。何よりも写真によって、彼らの活動のバックグラウンドとなった1960年代の空気感が、いきいきと伝わってくるのが大きい。
2014/03/15(土)(飯沢耕太郎)