artscapeレビュー

NAGOYA Archi Fes 中部卒業設計展 公開審査/アフタートーク

2014年04月15日号

吹上ホール/早崎施術院1F[愛知県]

NAF2014中部卒業設計展の会場、吹上ホールへ。午前はパネルディスカッション形式で、地元建築家らによる一次審査だった。リアルタイムで各作品の得票が表示された後、8作品が選ばれ、それに二次審査員(西沢立衛、城戸崎和佐、谷尻誠、藤村龍至、五十嵐)が4作品を追加し、午後のプレゼンと最終審査を行なう。昨年までの東海地区卒業設計合同展ディプコレは数人のメンバーだったが、NAF2014に模様替えし、一気に100人超えのスタッフによる大組織で運営していることに驚く。一次審査は九州デザインリーグや新人戦に近い形式だが、二次審査は仙台の卒計日本一をほうふつさせるスタイルとなった。最終の審査では、澤崎綾香の「コワレカタノツクリカタ」(松本城の外堀復元に伴う家屋撤去プロセスのデザイン)vs杉浦舞の「変容する皮膚、群体の意志」(新素材による昆虫建築のSF的世界)の決戦となり、自ら積極的に賞を穫りにいった後者が一票差で最優秀賞となる。強い建築的な提案を出せなかった作品群に対して、人間が勝ったと言うべきか。「変容する皮膚、群体の意志」も、ブルーノ・タウト/パウル・シェーアバルトらが20世紀初頭に夢想したガラスのユートピア世界、クリスタルに覆われたヴィジョンの21世紀バージョンとなるくらいの圧倒的な構想力を提示できれば、文句なく、作品の力だけで勝っていたはずだ。五十嵐賞は、平野遙香の「まちのケイショウ」とした。何の変哲もないまちの一角が防災公園に指定され、すべて壊されていくことに対し、街区の道路や敷地割、住宅のヴォリュームを記憶として残しながら防災公園とするもの。20世紀の日常への細かい観察、被災地の遺構問題の二点から興味をもった。デザインだけなら、藤江眞美の「伽藍の跡 都市化する6つの寺の編集」が巧いと思ったが、寺院を3つに統合しつつ、屋根だけ残すのが引っかかった。明治時代の神社合祀も想起させるが、戦後の寺院も歴史の一部であるし、そもそも宗教施設を合理的、経済的論理で「編集」する考え方がそぐわない。
審査の翌日は中部卒業設計展のアフタートークを行なう。1次と2次の審査員が選出した作品を再度レビューし、前日の結果を振り返る。あいちトリエンナーレ2013の影響を検証したり、今後のNAFの活動や中部卒業設計展をどうするかの公開ブレストにもなった。アフタートークこそが、他の卒計展と一番違うコンテンツだった。にもかかわらず、意外と出品していた学生の参加が少なかったのは残念である。さらにもう一度、審査員に作品をレビューをしてもらえる機会は、他の卒計展にない貴重な機会なのだが。

2014/03/18(火)~2014/03/19(水)(五十嵐太郎)

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