artscapeレビュー

北島敬三「UNTITLED RECORDS Vol.1」

2014年04月15日号

会期:2014/03/21~2014/04/20

photographers’ gallery[東京都]

北島敬三がphotographers’ galleryを舞台に新たなプロジェクトに着手した。北海道から沖縄まで全国各地の風景を撮影し、それらを「年4回のペースで全20冊以上」の写真集として出版、同時に写真展を開催するという息の長いシリーズだ。その第一弾として『UNTITLED RECORDS Vol.1』(KULA)が刊行され、同名の写真展が開催された。
だが、写真展の会場に足を運んだ者は、いかにも北島らしい仕掛けに驚きかつ戸惑うのではないだろうか。写真集の方は1999~2003年に広島、青森、東京、横浜、長野、八戸、千葉、沖縄で撮影された写真群からなる。ところが、会場に展示されているのは「石巻2011.10.13」「大船渡2011.6.2」「女川2011.6.27」、つまり東日本大震災と津波によって大きく破壊された建物とその周辺を撮影した3枚の写真なのだ。
おそらく東日本大震災の被災地を訪れて撮影するという経験が、北島にそれまで撮り続けてきた「無名の記録」の意味を再考させる契機になったのだろう。写真を撮るという行為を「かつてそこにあったもの」の姿を留めるというだけでなく、現在も大きく変貌しつつある状況といかにアクティブにかかわらせていくのか、そのことへの真摯な問いかけが、このような引き裂かれた展示と出版物という形をとったのではないだろうか。プロジェクトが、今後どのように展開していくのかを見守っていきたい。

2014/03/25(火)(飯沢耕太郎)

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