artscapeレビュー
101年目のロバート・キャパ
2014年04月15日号
会期:2014/03/22~2014/05/11
東京都写真美術館 地下1階展示室[東京都]
昨年はロバート・キャパの「生誕100年」ということで、あらためて彼の生涯と作品にスポットが当たった。その余波はまだ続いているようで、今回は「101年目」の展覧会が開催された。というより、キャパの抜群の知名度の高さと、写真の人気を考えると、毎年展覧会を開催してもかなりの観客動員が考えられるということだろう。とはいえ、これだけ何度も同工異曲の企画が続くと、いささか食傷気味になってくる。
今回は世界有数の規模を誇る東京富士美術館のロバート・キャパのコレクションを中心とした展示で、「時代」「戦渦」「つかの間の安らぎ」「友人たち」「人々とともに」の5部構成で、約150点の写真が展示されていた。展示構成はオーソドックスかつ堅実なもので、代表作が過不足なく入っている。やや目新しい視点としては、第4章の「友人たち」のパートにヘミングウェイ、ピカソ、バーグマンといった、彼の生涯を大きく左右した人物たちのポートレートが多数集められていることだろうか。これらを見ると大芸術家や大女優から、これほどまでに人間的な魅力溢れる表情を引き出した、キャパの写真家としての手腕と、そのコミュニケーション能力の高さにあらためて驚かされる。
そのなかに、恋人であり、「ロバート・キャパ」という架空の写真家をともにつくり上げたゲルダ・タローのポートレートも含まれていた。幸せそうな笑みを口元に浮かべ、ベッドに横たわるゲルダの姿には、ほかの写真にはない無防備な雰囲気が表われていて、二人の親密な関係が暗示されている。この写真が撮影されてから約1年後、ゲルダはスペイン戦線で落命するわけで、写真家と写真との数奇な運命の綾を感じないわけにはいかない。
2014/03/24(月)(飯沢耕太郎)