artscapeレビュー

VOCA展2014「現代美術の展望──新しい平面の作家たち」

2014年04月15日号

会期:2014/03/15~2014/03/30

上野の森美術館[東京都]

いまさら具象も抽象もないけれど、あえて分ければ、VOCA展の初期のころは抽象絵画が多かったのに、次第に具象が大半を占めるようになり、近年再び抽象が復活し始めている気がする。といってもカッコつきの「抽象」で、モダニズム華やかなりしころの抽象絵画とは似て非なるものかもしれない。今回でいえば秋吉風人、大槻英世、小川晴輝、片山真妃、高橋大輔らだ。支持体を透明にしたり(秋吉)、ユーモラスなだまし絵風にしたり(大槻)、イリュージョニズムを導入したり(小川)、作画に過剰なルールを課したり(片山)、絵具を立体的に盛り上げたり(高橋)と、モダニズム(フォーマリズムと置き換えてもいい)の作法を踏み外す掟破りの「抽象」が多い。これは従来の抽象絵画を相対化するメタ抽象ともいえるし、抽象絵画のパロディといえなくもない。かつての藤枝晃雄の言葉を借りれば「芸術としての芸術」ではなく「芸術についての芸術」ということだ。もっともそれが彼らの受賞できなかった理由ではないだろう。実際、彼らの作品が今回の受賞作より質が低いとは思えないのだけど。

2014/03/14(金)(村田真)

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