artscapeレビュー

山谷佑介「ground」

2014年04月15日号

会期:2014/03/20~2014/04/06

POST[東京都]

2〜3月にYUKA TSURUNO GALLERYで「Tsugi no yoru e」を開催したばかりの山谷佑介が、続けざまに個展を開催した。POSTのギャラリー・スペースと店舗内に展示された6点の作品は、とてもユニークな方法で制作されている。
ライブハウスの床を撮影し、それをインクジェット・プリントで実物大に引き伸ばして、もう一度その床に貼り巡らす。数時間経つと、ダンスに興じる観客たちによって、プリントのペーパーは汚され、踏みにじられ、表面が剥離してぼろぼろになっていく。それをそのまま展示したのが今回の「ground」展で、画像の片隅に煙草の吸い殻や髪の毛などがそのまま貼り付いているのに、妙に心そそられた。コンセプチュアルな作品だが、物質性が異様に強く、光と影に還元された画像ではない直接的な「印画」を獲得するという意味では、「写真とは何か?」という根源的な問いかけに答えを出そうとする「写真論写真」のようでもある。
「Tsugi no yoru e」が、大阪のアメリカ村界隈を撮影したモノクロームのスナップショットだったので、今回のシリーズでの“飛躍”は驚きと言うしかない。山谷の写真家としての資質が、ひとつの方向ではなく、多方向的に全面開花しつつあることのあらわれとも言えるだろう。しばらくは、彼の動向から目を離せそうもない。
なお、展覧会にあわせて、lemon booksから同名の写真集が刊行された。「床」のシリーズだけではなく、同時期に撮影されたカラー・スナップ群もおさめられており、山谷の発想が彼自身の生活感覚にしっかりと裏付けられていることをよく示していた。

写真:201207132330-0522 www

2014/03/27(木)(飯沢耕太郎)

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