artscapeレビュー

阿部直人《喜久田の家》/五十嵐淳《HOUSE H》(第7回 JIA東北住宅大賞2013)

2014年04月15日号

[福島県]

JIA東北住宅大賞の審査二日目は、郡山にて、阿部直人が設計した喜久田の家を訪れる。住宅地にあって周囲の家と正面から向き合うのを避けつつ、斜めに配置したプランをつくり、その全体にシンボリックな大屋根をかける。室内では吹抜けのまわりに小部屋群がレベルを変えながら付随するが、個別の空間も大屋根の一部として天井が続く。その後、同じ住宅地に震災前に見学した阿部による住宅があり、その増築部分も見学した。3.11後、放射線の影響を考え、子どもが遊べる開放的な室内空間を庭側に継ぎ足すというもの。夜に行なわれた福島部会の建築家との懇親会でも、除染ほか、さまざまなレベルで原発の影響が現地の活動に影を落としていることがよくわかる。
五十嵐淳によるいわき市のHOUSE Hを見学した。北海道の作品に比べて、ここでも放射線への意識的な影響を考え、緩衝空間も備えた、より閉じた箱型の住宅だった。隣接する川に対してもあまり開かず、開口部もわずかである。中に入ると、大きな倉庫を住宅にリノベーションしたような独特のワンルーム空間が展開する。施主がコレクターでもあり、陳列棚に置かれたグッズを見ていると、ショップにいるような気分にもなる。室内では、大空間ながら、デッキや階段、あるいは段々に下降する床によって、同時にさまざまな場が展開されている。

写真:上=《喜久田の家》、中=阿部による住宅の増築部分。下=《HOUSE H》

2014/03/02(日)(五十嵐太郎)

2014年04月15日号の
artscapeレビュー