artscapeレビュー

鈴鹿芳康「新作! 世界聖地シリーズ:インドネシアより」

2014年04月15日号

会期:2014/03/05~2014/04/01

ハッセルブラッド・ジャパンギャラリー[東京都]

鈴鹿芳康はサンフランシスコ・アート・インスティテュート卒業後、京都造形芸術大学で長く教鞭をとってきたアーティスト。版画からオブジェ作品まで、幅広い領域で作品を発表してきたが、近年は写真が中心的な発表媒体になりつつある。特にピンホールカメラを使用した作品は、東洋思想に造詣が深く、易や五行説などを下敷きに「必然と偶然が織り成す世界」を追求してきた彼にとって、さらに大きな意味を持ちつつあるように思える。
ひさしぶりの東京での個展でもある今回の新作展では、2012年に京都造形芸術大学退官後、新たな拠点となったインドネシア・バリ島で撮影した写真を展示している。太陽と海を中心に、仏教寺院や仏像などをシルエットとして配したシリーズは、8×10インチ判のフィルムを使用し、15秒から1分30秒ほどの露光時間で撮影された。それを伝統和紙(アワガミインクジェットペーパー)にデジタルプリントするという「ハイブリッド作品」として成立させている。ピンホールカメラはコントロールがむずかしく、実際に撮影してみないと、どのような画像が浮かび上がってくるのかはよくわからない。アーティストの主観的な操作ではなく、そこにある世界が自ずと形をとることを目指すという意味で、ピンホールカメラには写真表現の本質的な可能性が内在しているのではないだろうか。ハレーションを起こしつつ、天空に広がって微妙な彩をなす太陽の光の画像を見ながら、そんなことを考えていた。

2014/03/10(月)(飯沢耕太郎)

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