artscapeレビュー

せんだいデザインリーグ2014 卒業設計日本一決定戦 公開審査

2014年04月15日号

東北大学百周年記念会館川内萩ホール[宮城県]

仙台にて、卒計日本一決定戦の審査を担当した。午前は約3時間半かけて全作品を見る。昨年の日本一、高砂充希子の「工業の童話/パブリンとファクタロー」の影響が大きいことに驚く。すなわち、まわりの風景要素のサンプリング×搭状に積むタイプの作品が目立つ。そう言えば、大西麻貴の翌年にも同じ現象が起きていた。午後のファイナルの審査では、九州大学の岡田翔太郎による「でか山」で、日本一となる。アーキグラムのインスタントシティや神社建築の起源説のひとつを想起させる、七尾のプロジェクトだ。これは本当にできたら、是非行ってみたいと思わせる力があった。でか山は、この提案だからこそ、模型がデカ過ぎなのもありだと思ったが、来年以降、大きい模型だから評価されたと勘違いが起きないことを願う。今年の日本一決定の最後はでか山が突出し、バトルになりにくい流れだったが、ファイナリストでその可能性があったのは、東京理科大の安田大顕の「22世紀型ハイブリットハイパー管理社会」だった。22世紀管理社会は、ちゃんとした形態操作も伴うアイロニカルな社会批評なのだが、後者の細部があまり徹底されていないのが惜しかった。22世紀型の「理想」社会は、例えば、人口の半分が「犯罪者」とされ、いまの刑務所とは違うシステムだというところまで、フィクションのディテールがあれば推した。日本三は九州大学の市古慧の「界隈をたどるトンネル駅」である。リニアモーターカーの開通を見込み、名古屋駅の地下を巨大開発するというもの。地下街が発達した名古屋ならではの特性を活かし、名駅地下の着眼点はよいが、気になったのは、駅から納屋橋、錦三、円頓寺までずっとトンネル地下街が続くこと。これはさすがに相当な長さと規模になってしまう。今年は審査委員長が北山恒だったことから、全体として社会性が強く問われたと思う。

2014/03/09(日)(五十嵐太郎)

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