artscapeレビュー
スピリチュアル・ワールド
2014年06月15日号
会期:2014/05/13~2014/07/13
東京都写真美術館3階展示室[東京都]
あまり適切な言い方ではないかもしれないが、「意外に」面白い展覧会だった。毎年開催される東京都写真美術館の「コレクション展」も、そろそろネタ切れになりかかっているのではないだろうか。今回は、ある意味開き直ったということだろう。「不可視のもの、超越的なものにむかって、感性のチャンネルを開いていく」写真群を、「スピリチュアル・ワールド」という括りでまとめて、展示することになった。
あまりにも大ざっぱな定義であり、「神域」(鈴木理策、濱谷浩など)、「見えないものへ」(渡辺義雄、石元泰博、東松照明など)、「不死」(石川直樹、岡田紅陽など)、「神仏」(土門拳、土田ヒロミなど)、「婆バクハツ!」(内藤正敏)、「王国・沈黙の園+ジャパネスク・禅」(奈良原一高)、「全東洋写真・インド」(藤原新也)、「テクナメーション」(横尾忠則)、「湯船」(三好耕三)という展示構成もまったく一貫性がなく、混乱の極みとしかいいようがない。だが、逆にこれだけ写真家たちの年代、作風がバラバラだと、写真同士が衝突して、妙なエネルギーの渦が生じてくるように感じる。またこの混沌とした眺めは、八百万の神が宿る日本の宗教・精神世界の状況を、そのままストレートに反映しているようでもある。
印象に残った作品も多かった。鈴木理策の「海と山のあいだ」や三好耕三の「湯船」シリーズは、別な機会にもっと大きなスケールの展示でぜひ見てみたい。そこにはたしかに「不可視のもの」への通路がほの見えているように感じた。
2014/05/17(土)(飯沢耕太郎)