artscapeレビュー

阪本勇「天竺はどこや!!」

2014年06月15日号

会期:2014/05/12~2014/05/29

ガーディアン・ガーデン[東京都]

阪本勇は2006年に第27回写真「ひとつぼ展」に出品して入選した。今回のガーディアンガーデンでの個展は、最終審査までは残ったが、グランプリには届かなかった出品者の作品をあらためて取り上げる「The Second Stage at GG」の枠での展示になる。
会場に入ってすぐに目につくのは、天井から床の近くまで壁一面に貼られた巨大壁画である。ピカソの《ゲルニカ》をモノトーンで実物と同じ大きさに複写・プリントし、色のついた布テープをモザイク状に切り貼りして色をつけていく。まだ完成途上だが、でき上がったら子供たちとピクニックに行って、レジャーシートのように地面に敷いて楽しみたいのだそうだ。この壁画は、阪本の写真作品とは直接かかわりはない。だが単なる会場の装飾でもない。彼の創作全体を貫く無償のエネルギーの放出の仕方、被写体をパッチワークのように画面に構成していく感覚が、写真も壁画もまったく同じなのだ。おそらく彼にとっては壁画の制作も、写真を撮ったり、プリントしたりすることも、勢いのある文章を綴ることも、すべて根っこの所ではつながっているのだろう。そのあふれ出るエネルギーのボリューム感とスピード感が、以前に比べて格段に増しているように感じた。
それにしても、阪本の写真は「大阪的」としかいいようがない。彼はいま東京で暮らしているが、被写体の選び方、撮り方、見せ方に、派手好きで、演劇的なシチュエーションにさっと反応する大阪人の血が通っている。阪本だけでなく、佐伯慎亮、辺口芳典、鍛冶谷直記など、大阪出身の写真家に特有の、こってりとしたディープなスナップ写真のスタイルは、ひとつの水脈を作りつつあるのではないだろうか。

2014/05/24(土)(飯沢耕太郎)

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