artscapeレビュー
ふじのくに⇄せかい演劇祭 演劇公演『Jerk(ジャーク)』
2014年06月15日号
会期:2014/05/03~2014/05/04
舞台芸術公園 稽古場 Boxシアター[静岡県]
ジゼル・ヴィエンヌ演出の『Jerk』には度肝を抜かれた。27人の少年を殺したテキサスのゲイの実話をもとにした作品である。椅子に座った一人の俳優が、人形劇や腹話術、観者に要請するテキストの黙読などを通じて、連続殺人事件を再現する。ぬいぐるみや人形なのに、おぞましい猟奇殺人の現場が生々しく伝わる。『Jerk』は、聴衆に語りかける形式ゆえに、観者も否応なく芝居の一部に引きずり込まれ、最後はここが監獄なのか精神病院なのかという疑問が生じ、これまで語られた内容に別の解釈も浮かぶ。人形に生命を与えながら、人をモノとして扱う犯罪を表現する、俳優ジョナタン・カプドゥヴィエルの演技力に感心させられた。
写真:磯崎新《静岡県舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」》
2014/05/04(日)(五十嵐太郎)