artscapeレビュー

ライアン・マッギンレー「BODY LOUD!」

2016年06月15日号

会期:2016/04/16~2016/07/10

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

1977年、アメリカ・ニュージャージー州ラムジー生まれのライアン・マッギンレーは、2000年代に入ってから頭角をあらわし、2003年にはホイットニー美術館で個展を開催するなど、写真の新世代の旗手と見なされてきた。「ポスト・ティルマンス」の一番手ともいわれ続けてきたのだが、日本での最初の大規模点となる本展を見て、そのことには疑問符をつけざるを得ない。
マッギンレーの撮るあくまでもポジティブな若い男女のヌードは、たしかにアメリカのユース・カルチャーの本質的な部分を掬いとっている。「9.11」以後の社会の不安感、閉塞感に対して、若者たちのポジティブな生命力で対峙するというのは、たしかにひとつの戦略としては成り立つだろう。だが、それがいつまでたっても一本調子、同工異曲のイメージの繰り返しになっていて、ヴォルフガング・ティルマンスのように多層的なレイヤーとして現実世界を捉え返す視点に欠けているのは、あまりにも能天気としか言いようがない。
今回の展示の目玉は、壁一面に「ビニールステッカー」のプリント約500点を貼り巡らした巨大作品「YEARBOOK」(2014)だろう。だが、その圧倒的なスケール感にもかかわらず、そこに写っている男女の姿は、次第に区別がつかなくなり、均質化して見えてくる。まさにインスタグラム的な見え方の極致というべきで、その親しみやすさは、写真に向かってスマートフォンのシャッターをひっきりなしに切っていた観客たちに、大いにアピールするのではないだろうか。だが、おそらくこれらの写真は、会場を出れば、あっという間に忘れ去られてしまうだろう。スマホのデータもそのうち消去されてしまうのではないか。「それでいいのだ」という考え方もあるかもしれないが、「それでいいのか?」という疑問は残る。

2016/05/04(水)(飯沢耕太郎)

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