artscapeレビュー

村上華子「ANTICAMERA(OF THE EYE)」

2016年06月15日号

会期:2016/04/09~2016/05/07

タカ・イシイギャラリー東京[東京都]

およそ1世紀前の最初期のカラー写真「オートクローム」の未使用の乾板を現像して引き延ばした作品が並ぶ。全体に濃い青紫色で、周囲は褐色に縁どられ、ところどころ内側に滲み出すように触手が伸び、その先に小さな円形の島ができている。枠を意識したマーク・ロスコの絵画を思い出す。目を近づけると赤、青、緑の微粒子が見え、そのまま離れていくと今度は点や円が星や星雲のように感じられ、まるで電子望遠鏡で捉えた天体写真を見ているよう。ここで過去が現在に接合され、ミクロコスモスとマクロコスモスがワープしてつながるのだ。もうひとつ《APPRITION(OF THE SUN)》という作品は、ネットから拾った太陽の画像をダゲレオタイプで焼きつけたもの。ダゲレオタイプが流通していた19世紀には知り得なかった黒点やフレアまで写り込んでいて、これも過去と現在の出会いと言っていい。

2016/05/07(土)(村田真)

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