2020年11月15日号
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artscapeレビュー

安楽寺えみ「CHASM─裂け目」

2010年03月15日号

会期:2010/01/12~2010/02/20

ギャラリーパストレイズ[神奈川県]

安楽寺えみは1990年代から写真作品を制作しはじめ、2000年代以降に精力的に個展などで発表するようになった女性作家。アメリカのNazraeli Pressから写真集を刊行し、内外のグループ展にも参加するなど、存在感を強めている。本展の作品も、昨年、まずニューヨークのMIYAKO YOSHINAGA art prospectsで発表され、横浜のパストレイズ・ギャラリーに巡回してきた。
彼女の作品の中心的なテーマは、いつでも性的なイマジネーションである。これまでは男性性器に対する固執が目立っていた。といっても、草間彌生のように恐怖や強迫観念に支配されたものではなく、安楽寺のペニスは肯定的で幸福感に満たされ、どこかユーモラスだ。ところが、今回の展示では、タイトルが示すように裂け目=女性性器がもうひとつのテーマとして浮上してきた。暗闇にちょうどヴァギナの形の裂け目が刳り貫かれ、そこから着替えをしている女性の姿を覗き見ることができるのだ。とはいえ、作品から受ける印象は、決して窃視症を思わせる病的なものではなく、のびやかでエレガントであり、やはりほのかなユーモアが漂っている。このような品のいいエロティシズムは、日本の写真家ではなかなか身につけるのがむずかしいものだ。貴重な存在と言えるのではないだろうか。

2010/02/02(火)(飯沢耕太郎)

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