2020年11月15日号
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artscapeレビュー

原広司『YET』

2010年03月15日号

発行所:TOTO出版

発行日:2009年12月25日

わずか2,000円で、フルカラー。しかも、全文がバイリンガル。京都と大阪と札幌に都市のランドマークとなる巨大建築を実現し、70歳を過ぎてもなお走り続ける原広司のこれからを堪能できる一冊だ。こうした豪華な本をつくれるのは、TOTO出版ならではの企画だろう。『YET』というタイトルがついたのは、彼が提示した構想でまだ未完のプロジェクトを紹介しているからだ。磯崎のアンビルドは、過去─現在─未来の時間の錯乱であり、現実と虚構も反転させるトリックである。一方、原の『YET』は、1965年の有孔体の世界から2008年のΣ3まで、40の作品を通じて、未来に投げかける強いヴィジョンを打ちだす。それは思惟を重ね、言葉によって構築された固有の概念が、建築に結晶していく意志というべきものだ。90年代以降に定番となった日常の生活の延長としての建築ではない。宇宙のスケールから、原は建築を構想している。京都駅が完成したとき、ニュータイプの空間が実現したと感じたが、まさに来るべき新人類のための建築なのだ。

2010/01/31(日)(五十嵐太郎)

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