2020年11月15日号
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artscapeレビュー

永沼敦子「目くばせ」

2010年03月15日号

会期:2010/02/01~2010/02/18

ガーディアン・ガーデン[東京都]

永沼敦子は2002年に「写真ひとつぼ展」に入賞し、デジタルカメラで電車の車内を撮影した「bug train」のシリーズで注目された。だが、2009年に故郷の鹿児島に拠点を移し、写真家として次のステップを踏み出そうとしている。今回は、「写真ひとつぼ展」で惜しくもグランプリを逃した入賞者にあらためてスポットを当てる「The Second Stage at GG」の枠での展覧会であり、いまの永沼にはぴったりのタイミングだったと言えるだろう。
あたかも蠅の眼に成り代わって、空中を軽やかに浮遊しながら撮影したような以前の写真と比較すると、撮影のスタイルが大きく変化している。大地に根をおろしたようなどっしりとした安定感のある視線の質は、以前の永沼では考えられないものだ。被写体も人間の世界だけではなく、樹木、花、水、光や風など、「自然界たちが発するサイン」に目を配るようになってきている。鹿児島という母なる土地は、2009年に500回以上も噴火したという桜島を見てもわかるように、単純に優しいだけではなく「破壊と創造」のエネルギーに満ちあふれている。そういう力強い自然の営みを、丸ごと抱きとるようにカメラにおさめていこうという姿勢が、彼女のなかにしっかりと根づきつつあるようだ。
ちょっと気になったのは、壁一面にバラバラにずらしながら貼られ、床まではみだしてくるような展示のやり方。以前の「bug train」の浮遊感のある写真ならいいのだが、今回はややそぐわないように感じる。もう少しオーソドックスなフレーミングの展示でもよかったかもしれない。

2010/02/13(土)(飯沢耕太郎)

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