artscapeレビュー

磯崎新+浅田彰編『建築と哲学をめぐるセッション 1991-2008』

2010年03月15日号

発行所:鹿島出版会

発行日:2010年1月30日

1990年代に行なわれた建築の国際会議シリーズ、Anyコンファレンスの日本語版のために行なわれた討議を収録したもの。いずれも会議の後で行なわれたものなので、各開催地での裏話や参加者のエピソードなど、磯崎と浅田の尽きることがない、おしゃべりが楽しめる。と同時に、1990年代の建築界において何が起きていたのかを振り返るための定点観測としても読めるだろう。デリダの脱構築からドゥルーズの流体的生成へ。そして獰猛なグローバル資本主義の台頭によって、理論やデザインが無効化し、コールハースだけが残った。本書の最終章「Anyコンファレンスが切り開いた地平」において、浅田が「新しい理論的な枠組みを示すというより、旧来の理論的な枠組みが瓦解していくプロセスを体現している」と総括しているのが、印象的だ。20世紀を看取るイベントだったのかもしない。

2010/01/31(日)(五十嵐太郎)

2010年03月15日号の
artscapeレビュー