artscapeレビュー
三分一博志《WoodEgg お好み焼館》
2010年03月15日号
[広島県]
竣工:2008年
広島の建築家、三分一博志による、お好み焼きに関する展示・情報発信施設。特徴的な卵型の形態はすべてセランガンバツのルーバーで覆われ、日射量調節のため、方位ごとに方向が変えられているという。特に興味深かったのは、おそらく建築家の意図とは独立して、建築が都市におけるある種のアイコンとしても機能しはじめているように見えた点である。モニュメントが何らかの別の事象を記念する建造物であるのに対して、アイコンは自分自身を記念している建造物だといえるだろう。レム・コールハースの言葉を借りれば自己モニュメント、チャールズ・ジェンクスによれば異なるイメージを圧縮しつつ、わかりやすさを持った建築である。実は日本において、アイコン的な建築をあまり見ることがないと思っていたところに、この建築を見て、アイコン建築のイメージの強度を感じた。現在、アイコン建築そのものには賛否が入り交じっている。けれども、特に平板に見える日本の地方都市の風景には、このWoodEggのような、良質なアイコン建築がとても馴染み易いことを実感した。
2010/02/12(金)(松田達)