artscapeレビュー

中村拓志『恋する建築』

2010年03月15日号

発行所:学芸出版社

発行日:2007年12月4日

中村拓志氏は、筆者にとって隈研吾建築都市設計事務所時代の先輩にあたる。本書は、そのタイトルがよく知られているであろう。あまりにキャッチーなタイトルだと話題にもなったが、筆者は今回はじめて内容を読んだ。まず驚いたのは、中村の文章のうまさであった。全二十編のエッセイになっており、もちろん文学的なうまさというわけではない。しかし、感じたことが論理的に明晰に展開されていく手続きは、いわば建築的な文章の上手さといえるようなものであると感じた。優れた建築家は文章もうまい。これは乾久美子氏の文章を読んだ時にも感じたものに近い。その上で、中村氏は論理的なものを感覚的なもので大らかに包み込んでいるような気がする。そう、本書は正確に中村拓志の建築そのものであるかのようにも思えたのだ。

2010/02/21(日)(松田達)

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