artscapeレビュー

小泉明郎 展「A LOVE SUPREME 至上の愛」

2010年03月15日号

会期:2010/02/12~2010/02/28

京都造形芸術大学 GALLERY RAKU[京都府]

《男たちのメロドラマ#3》という作品は、シリーズで展開している作品らしい。ドローイング作品や展示のための構想スケッチなどもあったが、主に会場は個展初日に行なわれたパフォーマンスの記録映像とその時の舞台装置のインスタレーションで構成されていた。三島由紀夫の『金閣寺』の主人公をモチーフにしていると紹介されていたが、彼がパフォーマンスでかぶっていたマスクは三島自身がモデルのようだった。儀式的に切腹が行なわれるパフォーマンスなのだが、それが自慰行為のイメージでとにかく強烈。その最中ずっと聞こえるノイズ音も耳に焼き付くよう。別室では過去に発表された映像3作品も上映されていた。いずれも、消費社会の構造やそのなかでの権力構造、そこで翻弄される人々(われわれの)心理に鋭く切り込むような作品。この作家の作品は、見ると不愉快に感じる人もきっといるだろうな。だけど、個人的にはその鋭い考察と批判性を、軽々と切なさを孕んだコメディに換えてみせるセンスや強い態度がとても魅力的に映った。なにしろ今年見た展覧会のなかでも、もっとも過激で印象に残る個展だった。

2010/02/28(日)(酒井千穂)

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