artscapeレビュー

谷口吉生《広島市環境局中工場》

2010年03月15日号

[広島県]

竣工:2004年

谷口吉生による清掃工場。巨大なヴォリュームに対して、長手方向側面に直角に入り込む吉島通りを延長した道路上部の二階部分が、エコリアムと呼ばれる貫通通路となっており、この部分が一般市民に開放されている。エコリアムとは、エコとアトリウムを組み合わせた造語であり、ガラスを通して見る清掃工場の巨大でメタリックな焼却装置は、恐ろしく美しいオブジェと化していた。谷口は豊田市美術館など、多くの美術館建築の設計で知られるが、清掃工場の機械までも美術品のように見せてしまう手腕にうならされた。プランの構成も圧倒的な説得力を持っている。吉島通りの行き止まりを延長して海につなぐのがこの通路であり、最短距離の公共通路によって、建築全体が、最大限に公共化されているように感じた。海に向かって突き出す通路の少し手前から下に降りる階段の存在感が絶妙で、ここでは入口部分での行き止まりを延長する感覚がリフレインされていたと感じた。

2010/02/12(金)(松田達)

2010年03月15日号の
artscapeレビュー